風のささやき

あなたが

あなたが笑ってくれるから
僕は風になる
明るい風になってあなたの笑顔を
もっと輝かせたいと思うから

あなたが涙を流すから
僕はどしゃぶりの雨になる
あなたの頬の涙が
誰からも見えないように
それ以上に僕も悲しいから
 
あなたが少しいらいらとするから
僕は一本の高い木になる
あなたが静かにもたれかかり
心落ち着かせられる
大木になれればと思うから

あなたが遠い目をするから
僕はその目線の先に届こうと
一羽の燕になり空を駆けだす
時々は青さに彷徨いながらも
 
あなたが目を閉じると
僕はあなたの瞳には映らなくなって
何になればいいのかまごついて
 
あなたが思い出し笑いをする
僕以外のあなたを占めるものに
軽い嫉妬を覚えながら
 
あなたの耳が何かを聞こうと
だから僕は青い波になって
心地よい潮騒を奏でる
気がついてはいるのだけれど
あまりにも深みのない海だとは
その波音も息切れて途切れ途切れで
 
けれどあなたがいてくれるだけで
胸が温かくなる
だから僕は太陽になる
心地よい春の太陽になる