風のささやき

子供とブランコと

僕の胸の中にすっぽりと収まって
一緒にブランコに揺られている子供
ぴったりとくっついたその体に
胸のあたりが熱くなっていく

子供もすっかりと汗ばんで
濡れた髪の毛が
顔のあたりにこそばゆい
 
夕暮れ時
空にかかった
真っ赤な夕日が
目の前に近づき
また遠のいてゆく
風が僕らの頬を
ゆっくりと舐める
 
木々の葉っぱは
今日見た出来事の話で楽しそうだ
 
鳴きながら小鳥も家に帰るよ
きっと家族みんなで体寄せ合い眠るんだ 
 
子供の横顔を眺めると
満足そうな笑顔を浮かべたままで
 
その楽しさが僕にも伝わってくる 
いつの間にかブランコに揺られているうちに
一つに心臓が繋がってしまったように
 
ただ揺られているだけなのに
こんなにも楽しい時間は
いつ以来のことだろう
 
一生懸命に鎖を握って
赤くなった小さな手
その上に僕は自分の
大きな手を重ねたりして
 
このまま止めなければ
いつまでも飽きることなく
子供はブランコに
揺られているのだろうけど
 
もうすぐ日も落ちてしまうから 
そうして何よりも
僕の気分が悪くなってしまったから
もう家に帰ろう
 
僕は足を下ろし大地を蹴って
ブランコを止める
僕らの足元がまたしっかりと定まって
 
それでも子供は諦めきれず
僕の胸の中でまた
ブランコが動き出すのを待っていた