風のささやき

真夜中に

真夜中に 一人だけ全力で
湯気を立てている 加湿器のある部屋
僕の傍らに 眠っている子供の
何ともや 静かな吐息

その頬に触れてみれば 迷惑そうにする
その小さな脳裏には もう
たわいのない夢 浮かんだりもするのだろうか

その夢には 僕が
出てくるような 場面が
あるのだろうか あるのならば
それを 覗いてみたい気がしている

いつからか 守られた者から
守る者へと 立場を変えて
そのことに まだ
戸惑っている 僕の傍ら
確かに 横たわっている子供の
小さな 紅葉のような手

そこに 握られるべき未来を僕は
繋ぐことが できるのだろうか
僕の知るものは たくさんの迷い
それ故に 薄汚れてしまった
自信と 誇りとで

僕は もう一度
揺るぎの無いものを 胸に
取り戻すための 試みに
この身を 投じなければ
きっと いけない

確かに 疑うことなく 僕らを信じて
傍らに 静かに眠る
その子供を 守る者として

僕に 似ているところのある
その顔を 眺めながら
小さな手に 節ばった僕の人差し指を
そっと 握らせていた