風のささやき

ブランコ

 秋の風を切って
 ブランコが揺れる

小さな女の子が地面を
思い切りけると
その分だけブランコは
地面から遠くへと離陸する

 その離陸
 あと少しのところで
 繋ぎとめている錆びのある鎖
 張り切ってミシミシと音を立て

地面から自由に飛翔する体
女の子の気持ちが高ぶり
混じりけのない楽しさに
笑いがこぼれる口元

 ブランコはただ黙って
 女の子の足もとを支えている
 規則正しい円の動きをなぞりながら

目まぐるしくて落ちつかない
周りの風景の変化も
女の子には楽しいのだろう

 枯葉が急ぎ
 落ちては集まる
 万が一でも女の子が
 地面に落ちても
 痛くは無いよう
 
落ちては上り
上っては落ちる
終わりの無い運動の中で

女の子は学んでいるのかも知れない
これから何度でも訪れる
人の生のふり幅
そのめまぐるしい変化
時としては苦しさに満ちた

それでも足元を支え続けてくれる
確かな何かの存在を

 やがては夕暮れ
 友達と手をつなぎ
 帰って行く女の子

その確かな存在は
その友達かも知れない
あるいは家に待っているお母さん
今 空にある月
昇らせた何かかも知れない