風のささやき

床掃除

子供たちのやりたい放題は
時として大人の想像を遥かに超える

大声をあげながら
時間をかけて食べた離乳食
好き勝手にのばす手を自由にさせていたら
床の上には投げつけられた
パン屑やりんごが目にも無残な状態だ

その上をさらに丁寧に
何度も歩行器で踏み固めたから
床と一体となってしまった硬い食べ残し

よくもこんなにも汚せるものだと
半分は感心しながら
四つん這いになり雑巾をかけている
ギターを弾く伸びた爪で
落ちない食べかすを擦っている徒労

さっきからもう
一時間近くこんなことをしているけれど
床を見渡せばまだ
汚れたままの状態だ

食事中の子供たちは随分と楽しそうだった
自分の意思で積極的に食べたいと手を伸ばす
もう一人前の存在がそこにはいる

育むということは
こんなにも時間と労力を要するもの
そうして育まれているものは
それを知らずに無邪気なままだ

(僕らもこうして育まれてきたのだと
 親になって始めて分かる
 実感が確かにある)

育みながら僕らも
子供たちに育てられている
耐えることを学ぶこと
注意深く見守ること
分け与えることが
喜びであるということ

願わくばいつか僕らが
草木を導く太陽のような
暖かな陽射しとなって
お前たちを育んで行ければいいと
お前たちの中に伸び行こうとする芽が
自然と胎動を始められるように

それには僕らはまだまだ足りず
その術が分からないままだから

とりあえずは目の前の
汚れた床の掃除に
注力をしようと思っている