風のささやき

風と子供と

レースの白いカーテンがまるで
生き物のように動き出した

さっきまでは控えめに
部屋の中をうかがっているだけの
初夏の風だったのに

その急な豹変を喜んでいるのは
二人のミルクの匂いのする子供たち

勢いのついた風をバタバタと
手足を動かし歓迎をして
睫に風が触るたびに
生えたての白い歯を見せて

風がどこで生まれて
どこへ吹いて行くのか
僕は知らない
けれどずっとずっと昔から
それはこの星の上にあった
親愛なる昔馴染み

体のすべてでそれを
思い起こさせてくれる
風もお前たちをあやすことが楽しくなって
ひっきりなしに窓から押し寄せるんだ

風は伝えてくれるかい饒舌に
お前の知らない世界の素晴らしさ
僕が語るには幾千もの言葉
費やしても伝わらないだろうから
一吹きでそれを教えてくれる
風の話には素直に耳を傾けて

甲高い喜びの声も
風はきっと心地よく思い
さらって行ってくれるよ

こんな子供がいたんだと
新しく生まれる子供のところへの
土産話にでもしようと

まだ風に手足を
なぞられているだけのお前が
やがて自分の足で立つときが来たら
今度はお前が
自分の足で風を追って行くんだ
まだ見ない広くて深い世界へと向って