風のささやき

胸の中のお前たちに

心臓の音を聞くと赤ん坊は落ち着くという
お腹の中にいた時にずっとその音に護られていたから
温かな水の中に繰り返し響いていた子守唄

胸の高さで抱いていると
ほんとうにそうだね
安心しきって静かに寝てしまう
胸に顔を埋めるように
まだ座らない首を時々がくりとさせながらも

普段そこにあることさえも意識していない
心臓の音が安心を与えるなんて
それは嬉しいことだ
誰も気づかない僕の生の脈動を
こうして肯ってくれるなんて

その眠りのための眠りの
目をつむった健やかな顔を見ながら
どんな風に僕の鼓動が聞こえているのか
こっそりと尋ねてみたくなる

それは正しく
明るい調子で鳴り響いているかい
それとも少し疲れて
泣き言を零しているかい
前者であればとても励みになるけれど

まだ何も出来ず
胸の中で眠るだけの
小さく温かなお前たちなのに
僕が忘れているものに
気づかせてくれる
その力の大きさに驚いている