風のささやき

とある日の散歩に

さっきまで降っていた
わずかばかりの雪も止んだらしい
窓の外が随分と明るくなって来た

ちょうど今なら陽射しが零れているから
家の中で過ごしてばかりのお前たちを連れて
日光浴の散歩に行こう

家の周りの
わずか数百メートルの距離だけど
新鮮な風に触れる
その心地よさを感じに

真っ白な雪に覆われた一面
銀色の陽射しの照り返しは
家の中にいたお前たちには
きっと眩しすぎて

もったいないよと
耳元で呟く僕の言葉を
聞くこともなく頑なに
目を開けようともしない
お前たちに苦笑いしながら

僕らの散歩を邪魔しないよう
すべてのものが気を使ってくれているようで
物音も少ない道
立ち止まっては時々
あれは川のせせらぎだよ
あそこに飛んでいるのは鳶だよと
僕は指差し伝えている

そうして眺める空は
なんて深い色を醸し出しているのだろう
もう少しお前たちが大きかったら
その空に向けてお前たちを
高く投げ上げてやれるのに
その色の祝福を受けられるようにと

こんな時間があったこと
お前たちの記憶からは消えて行くのだろうけど
僕の言葉は届いているかい
固く目をつむったままのお前たちに

それを受け取ってお前たちが
豊かに育んでくれればと
そんなことを思っていた
とある日の散歩に