風のささやき

一日と子供たちと

一日一日と君のお腹の中で
二人の子供が成長を続けている
君のお腹が日々大きくなって
張り裂けるのでは思うぐらいに

けれど子供たちは
健やかに育つことをやめない
どれだけ充実した生の時間が
そこには流れているのだろう

育ち行くことが喜びであるかのように
動き回って落ちつきのない
子供たちの手の跡が
お腹の上に刻まれて消える
幸せが一瞬かたどる手形

無事にこのまま育ってくれればいいと
不安を感じている僕らの
気持ちが伝わることはないのだろうけど

暖かな病室の窓の外では
秋の冷たい風に葉っぱが揺れている
金色になって黄金の小判が実っているようだ
来年はきっと子供たちと
そんな葉っぱを指差すことができれば嬉しいけれど

こうも一日は長く
充実しているものなのだと
君と話しているこんなわずかな時間にも
子供たちは健やかに育まれ
その恵みの深さには
あらため感謝するばかりだ

僕は少し手持ち無沙汰になって
真っ赤に染まった林檎の皮を剥いている
いたずらに時間を費やしている僕には
口にした一年の実りの味は
すっぱく思えていた