風のささやき

若葉と夕日と

淡い夕日と銀杏の若葉が戯れている
まるで揺りかごの中の赤ん坊の
微笑みのような無邪気さで
微風もきっと楽しくなって
透明な足で若葉を軽くキックしている

僕の顔も夕映えに赤く色塗られている
通り過ごして行く車も
猛獣の険しさを無くし
鋼の体を柔らかな肉体に変えてしまった

今日の終わりの空に
帰り行く鳥の群れの目指す茜雲
さっきまで人と話をしていた緊張を
吐き出すようにほっと一息をついて
僕も肩の力を抜いてみる

ヒラヒラと楽しい若葉はまだ僕の上にあり
僕はあなたが見せてくれた
エコー写真を思い出している
あなたの体に芽吹いたばかりの
ほんとうに小さな二つの生命

こんな銀杏の若葉のように
僕が夕日を浴びている刹那からも
着実に育まれようとする生命の
素直さと楽しさ

ヒラヒラと
僕の頭の上で夕日と遊んでいる若葉
その一葉一葉と
気づかれないところで大きくなる生命と
同じ健やかな時を過ごしているんだ

僕は不思議な思いに捕らわれて
夕映えの奥に潜んでいる
見えない何かに向って
静かな祈りで満たされていたくなる