風のささやき

君の瞳は

君の瞳は
青いアイシャドウのような哀しみで縁取られている
さっきまできっと 泣いていたんだ
涙の跡が 青く染まって頬に消えない

君は口を開いて 無理に笑おうとする
頬がぎこちなく引きつる 唇が歪む
真っ赤なルージュが 痛々しく見えて

君の耳が しょんぼりと下を向く
銀色のイヤリングは 寂しげな雨粒のようだ
君の鼓膜を打ち続けている 憂鬱な物音
それは君の死を願い続ける 拍手のようで

逃れる術のない君の鼻は おかしな位に
ヒクヒクと震えて湿った 犬の鼻のようだ
何度も手で 擦り付けたからだろうか
真っ赤に 腫れあがっていて

おずおずと差し向ける 君の眼差しには確かに
君を見る たくさんの人の好奇の目
君は怯えて 言葉を失くし
だからパントマイムで 人々と話す

もう 遠くに行っておくれと
自分を 一人にしてくれと
しなる指先 汗ばむ手足は
滑稽な程に 力が入って硬くなっている

紫色の天幕は 残酷にも沈黙を続け
夢見る星々は 自分たちの夢だけで一杯だ
笑顔を向ける 人々の心は闇で
どんな黒い思惑が その後ろに蠢めいているのか
本人でさえ 気が付いていない気持ちの悪さに

化粧で隠した 君の顔は
笑っているのに 泣いて見える
泣いているのに 笑って見える
もうどちらとも 分からない表情で

素の顔はすっかりと 歪められて皺も深く
君は 狂気の手前の抵抗に 体を動かしている
君の 声なき声は誰にも届かない

見ていることも 辛くなって
僕は 君の側から立ち去っていた
まるで自分を 見ているようだったから