風のささやき

雨降る中で

激しく降り続ける雨よ
僕の心の苦しみも消してくれないか

傘を持っていても変わらない横殴りの雨
白い水しぶき跳ね上げては僕のズボンを濡らし
曇る眼鏡の水滴は拭い切れない

人通りの少ない道を
どこに僕は急いでいるのだろう
自分の意思を持つように黙々と進む足
雨に濡れない場所に辿りついたとて
それが僕の苦しみを消してくれるわけでもないのに

僕は泣いているのではない
泣いているのではないと
一人つぶやいてみるのだが
ほんとうに泣いていないのかは自信がなくて
濡れた顔を何度も拭っているのだが

雨は激しく降り続いている
木々の緑はその激しさに身をよじる
公園のブランコも鎖を軋ませて揺れる

僕の苦しみに同じように
身悶えしくれるものはいないのに

僕の苦しみがもし胸の内を超えることができたなら
こんな風に世界を荒らしてしまえる程だと
思えるのに

雨だけが世界を支配して
雨だけが世界を濡らしている

僕の苦しみが濡らせるものは
僕の小さな二つの目のみで
   
激しく降り続ける雨よ
僕の心の苦しみも黙らせてくれないか
せめて一瞬だけでいいから
お前の声高の勢いで