風のささやき

君とまたこの道を

君といつかまたこの道を
歩くことができるだろうか
新しい春の訪れに青い空をみつめ
ちょっと心躍らせたりしながら

配達人となった風が
心をこめた手紙のように
次々と花びらを届けてくれる
桜吹雪の回廊に

陽射しと花びらとは溶け合い
僕の心の中のすべても
促されてもいないのに溶け出してしまった

春の暖かな陽射しを
たくさん貯めるポケットのように
空っぽの僕の横には あなたが
小さく歌を口ずさんで目を細めている

僕はすっかりと満足した気分で
ふとこのまま まどろみたくさえなってくる
何故かって こんなに軽い心で見る夢は
疑いも無く 楽しい夢だろうから
たとえば雲と雲の間に ハンモックを吊って
青い空の布団に眠るみたいな
平和な夢さえ見られそうだから

川の水面には雪のかけらよりも
か弱げに見える桜の花びら
若葉の柳は風景の塵を祓う
ちょっと威張った神主みたいだ

こんな楽しさを胸に歩くように
僕らの時間も続いていけばいいけれど
それは高望み過ぎるのかも知れない

それならば君と
いつかまたこの道を
楽しく歩ければいい
新しい春の訪れに青い空をみつめ
ちょっと心躍らせたりしながら

それを一人
散り行く桜に約束をした