風のささやき

ママのママ

ママの腕の中に甘えているお前
今しがた泣いていた涙の跡が
しっかりと頬っぺたに残っている

誰にもはばかることもなく涙を流せることが
どんなに贅沢なことなのかは
今のお前には知る術もないだろうけど

お前の指差す写真の上には
ママのママが笑っている
「あれはママのママ
 僕のママの写真だよ」と
お前に教えても
お前はキョトンとするばかり

ほんとうは誰よりも
マシュマロのように柔らかくていい匂いのするお前を
ギユッと抱きしめたかったママのママ

それすら叶わない遠いところで
きっとお前が大きくなる姿を
見守ってくれているはず

そうしてそのママのママ
僕のお婆ちゃんも
ついこの前 遠くへ行ってしまったんだよ
寒い寒い雪の降る日
たくさんの優しい思い出だけを僕の中に残して

お前のママのママのママ
以前一度だけお前も会ったことがあるだろう
写真の中でどれほど嬉しそうに
お前を抱いていたか

もうママの腕の中にも飽きて
一人遊び始めるお前
追いかければ付いてくるなと
僕の手を振りほどくお前には

お前のママの
そのママのママの
そうしてそのママの愛情さえも注がれていること
きっと忘れないでいて欲しい

それがどんな素敵な芽を出すのかは
今は分かりはしないけれど

やがてお前も
たった一人の誰かのママになって
腕の中の温もりを
その子供に伝えて行くんだ・・・・・