風のささやき

落葉の栞に

枯葉踏む音だけを耳が拾った
澄んだ秋の午後
林であなたが拾い上げた落葉

ものうげな秋の溜息が
その上にすっかりと写し取られた
赤のグラデーション

あなたは踏み下ろす足を
急いでとめた
欲しかった玩具をもらう
子供のように喜んだ

満面の笑顔に
より心を惹かれたけれど

「押し花のように
 本の栞にするの」と

それはどんなにか
文脈を美しく彩るだろう
あなたの心のお守りに

あの落ち葉の栞 あなたは
まだ大切にしているだろうか
大好きな本にはさみ
大切な言葉に寄り添わせ

冷たさが手に触る
もう冬の入り口に立っている
首に巻いたマフラーを
堅く結び直す

一人の秋に
足元の落葉を拾い上げる
あの日に見た それにも似ている

一枚の葉にも思いはこもり
そこに紡がれる時間もある
もうあなたと二人のときに
押し戻す術もないけれど