風のささやき

春の別れに

僕の毎日の風景から
あなたがいなくなって

優しく触って行く春風さえも
どこか痛く思えて

何かにつけて 思い出してしまう
あなたの面影に

夢から目覚めたときのように
探してしまう その姿を

交差点にも 駅のホームにも
僕のまわりには もう見当たらないあなたの姿に

風景は どこか不自然にゆがんでいる
僕の足取りも 昨日とは少し違うみたいで

僕の言葉も もう僕のものではないみたい
うつろに僕のまわり 漂う力の無さで

桜の花が散り落ちるように
別れてしまえば 何も残らないと思っていた

あなたとの対話が
こんなにも僕の中 深く根を下ろしていたなんて

それが例え 怒り含んだ言葉であっても
あまり可笑しくもない 冗談であったとしても

ほんとうは 気づいていた
あなたのいない日を 信じたくなかっただけのこと

桜吹雪の 回廊を歩みながら
僕はその潔さの訳を 桜に尋ねて歩くばかりだ

自分の中に いつの間にか
こんな深く 根を下ろしていたあなたの面影を

あなたと一緒に過ごした長い時間を
どうすれば なにもなかったように
抜き去ることができるのかと