風のささやき

小さな怒り

優しい 思いだけで
一杯にしていたい 僕の胸の内に
小さな怒りが 青白く燃え上がる
そのたびごとに マッチのような
寂しい燐の匂いが 僕の鼻の奥をつき 
どうすれば 僕は
こんなに寂しい 遊戯から
解き放たれることが できるだろう

大切なあなたの 面影さえも
少しずつ 焦がしていく
僕の怒りの 発火体を
探り当てることもできずに

僕は街の中で 燃え上がり
焦げてしまいそうだった
僕の目に映るものが
寂しい怒りの 連鎖だったから

誰かそんな僕に 気づきはしないかと
だから おどおどとした目で
僕はすっかり 警戒していたんだ

   ○

今 僕に口付けていった
窓からの初夏の風は 遠いあなたの
ため息のようにも思え 心も少し弱くなる

小さな怒りに焼かれた
寂しい燃え殻が まだ僕の芯の方で
懲りないままに くすぶっている

僕は人を 汚すことしか
できなくて あるから
あなたの瞳に 映ることさえ
恥ずかしく 思ってしまうよ

   ○

羽毛の温もりに 寄り添い
軽く頭休める 小鳥の眠りを
真似のできない
僕は また一人
悪い夢に 体沈めるだろう