風のささやき

小さな怒り

優しい思いだけで
一杯になりたい胸に
青白く燃える小さな怒り

マッチを擦るように
燐の匂いが鼻の奥に寂しい
どうすればこんな無益な遊戯から
解き放たれるだろう

大切なあなたの面影さえ
少しずつ焦がす
炎を消すこともできずに

街の中で 燃え上がり
燃え広がり 焦げ付く
目に映るものは連鎖する
寂しい怒りの発火体

誰かこの炎に気がつかないか
だからおどおどとした目で
辺りをすっかりと警戒する

   ○

今 口づけた
耳元の風はあなたの
ため息のように感じる
心も弱くなる

小さな怒りに焼かれた
燃え殻がまだ体の芯に
くすぶっている
うまく消せない
再び燃え上がろうとする

人を焦がすことしか
できない僕の炎で
あなたの瞳を汚すことを
恥ずかしく思う

   ○

いつも燃えている僕は
怒りの放火魔

羽毛の温もりに寄り添い
軽く頭を休める
二羽の小鳥の眠り
真似はできない

また一人 僕は
青白い業火の夢に
体を焼くことだろう