風のささやき

高原の薊

さっきまでは高原の微風に
気持ちよさげにゆられていた薊よ
風景がそこに凝縮している
青空との激しい対比を

楽しんでいた おまえを
突然に千切った人の手の技
無邪気なままの暴力的な衝動が
人の胸をよぎった一瞬の後

青空との会話もできなくなった
首なしのお前を
照らし続けて 明るいままの太陽

お前は 胸にかすかな
予感を 覚えたことがあったか
花のままに朽ちて
行くことができないことを

けれど僕らが どれほど
自らの運命をよく知るだろう
おまえ以上に僕らは
無知で 不安なままだ

高原の風が強くなり 僕の耳を覆う
僕はやがて 風のトンネルに
視界を奪われて
友の呼ぶ声が聞こえなくなる

僕が笑っている 僕が泣いている
心は高ぶりに 震えようとするのに
心には いつもどこか
ものうげな風が吹いている

機会が 許されるのならば
この世の外れへと 
こぼれ落ちたいと思っている