風のささやき

さよならに

おまえは聞いていた おまえの命の声を
そのささやきに動かされて
ついばんでいた 粟や稗
白い体を少し膨らませた
最後のあどけない 春の陽射しの中で

おまえも僕も知らなかった
僕の見た おまえの最後の食事
その最後の味は 少しほろ苦かったりしたのだろうか
―きっと少しは 舌の上に広がった未練の味

小さな体を 止まり木から落として 硬くなっていた朝
いつでもさよならは そんな突然にやってきて
人から言葉を 奪い去る
春の強い風が口を塞ぐのにも似て
どこか柔らかい慰めが 
唇に触れていることさえも わかるのだけれど
風景の遠くで 何かがキラキラと
輝いているのは わかるのだけれど
今は 素直に微笑めない
表には若葉が 何も知らずに手を振っている
―そんな若葉と おまえの白い印象とが
 生きている僕の胸のうちに
 絵の具のように 混ざり合っていく

今日も 眠り足りない瞳 朝が起こせば
元気よく鳴いて迎えてくれた
おまえのいないはずのかごを
また のぞきこんでしまう