眠りに落ちる前に
気がついているかな 寂しげな風が 今 窓を叩いて過ぎたこと きっと意地悪なつむじ風が 脅かそうと待っている 気がついているかな 笑った顔の下には 悲しい風景がたくさん 去る場所もなく放心している もう見たくもなくて 触れようとする たくさんのものから 心を守ろうと 壊れないようにと 目を閉じて酩酊にまかせる それは こっけいなこと 世界は明るさに溢れていると 知っているはずなのに 夢さえもが守ってくれない 白黒の砂嵐 渇いた映像と その中でもだえる 手を伸ばす誰かが 繰り替えし 眠りを苦しくさせる 見上げればまた 月のように 静かにそこにいる あなたに触れる 優しい瞳は月影のそよぎ 僕を映しとってくれる あなたの面影一杯に満ちて また眠りに落ちてゆきたい それがけだるい朝日にも あなたに会いたくて目覚める あなたの微笑みに 揺りかごのように眠る 唇や頬のなだらかな輪郭をなぞり 一人の眠りにもその柔らさに埋もれ 静かな眼差しの色合いを 風のそよぎと 胸に吹かせて 気がついているかな 悲しみが深まるにつれて どれだけ大切になってゆく あなたか