風のささやき

眠りに落ちる前に

気づいているかい
今どこか寂しい風が
窓辺を叩いて過ぎたこと
窓の外では黒いつむじ風が
恐る恐るカーテンを開く
僕を脅かそうと待っているから

気づいているかい
笑った僕の顔の下には
たくさんの悲しい風景がいつでも
瞳の下で放心していること

もう見たくもない一杯のものから
胸の内を守ろうと 僕が壊れないようにと
瞳つむって酩酊にまかせる
それはきっと こっけいなこと
世界は明るさに溢れていると
知っているはずなのに

けれど 夢さえもが眠りに僕を脅かす
どこか渇いた 寂しい映像が
残酷な繰り替えしとノイズで 僕を苦しませるから

僕はまたものうげに あなたを見上げる
あなたの瞳は優しい色にあふれて
僕の姿を映しとってくれるから
あなたの面影一杯に僕を満たして
眠りの中に落ちていきたいと

それがまた朝のけだるい陽射しにも
僕を呼び起こしてくれるから
あなたに会いたいことが
僕を目覚めさせるから

あなたの微笑みに抱かれて
もう少しこのまま
唇や頬の輪郭を なぞらせてゆっくりと
一人の眠りにも その柔らかな曲線
忘れないように
僕を受け止めてくれる 眼差しの
色合いの強さと深さ
何よりも深く 胸に刻み込むから

気づいているかい
悲しみが深まるにつれて
どれだけあなたが 僕に
大切になっていくかを