風のささやき

春風の大地

ほら 肌にも柔らかな陽射しに
誘われて吹く春風が真っ先に
優しく笑うあなたを見つけて
いたずらげに髪を遊ぶから
悪ふざけの子犬と戯れるように
あなたは頭を手で押さえて
僕に楽しげに助けをもとめている

あなたに一番に吹いた春の風
誰よりもきっとあなたに春を告げたくて
運んできたのは大地に落とす春の色
たくさんの生命の息吹 川を走らせる鼓動
野を満たす花の香りや銀色にまぶしい陽射し
僕があなたに届けたい幾億もの優しい言葉を
一息の流れにのせてあなたのもとへ

(川原にはタンポポが笑うように
 それはきっと
 あなたの楽しさにつられて
 幾つもの甘い花の香りは
 春が作ったあなたに似合う香水)

こんな風がいつまでもあなたの周りには吹いて
あなたをすべての悲しいことから
遠ざけてくれればいいと
ありえないことを考える僕の
長いコートも風にふくらみ
明日からはもういらないかも知れない

春の小川がとけだすように
僕の心もまた歌い出そうとしている
そばにいるあなたが僕には春のようだから
あなたが笑ってくれるたび
僕の心には春風が吹いて
萌黄色に芽吹こうとしているのだと
光と風との会話にまた豊かに深み行けるのだと
暖かな予感が大地にあふれているんだ