風のささやき

都会のノイズ

ビルに激しく吐血して
息絶えた夕日の悲鳴が
鈍器で殴られたように頭にうずく

神経のように張り巡らされた
高速道路は目詰まりをして
目を光らせ唸りあげる車

人波が一斉に動きだす
交差点の青信号
クラクション追い立てられて
軍隊のように足並みをそろえて
青白い顔にこわばった仮面
蜘蛛の巣のはる伽藍洞の胸

空虚な笑いをひき潰す
列車の急ブレーキ
軋んだ悲鳴は
破裂した沢山の思い出

逃げ込む部屋の棺桶にも
誰かがドアを激しく叩く
眠らせない
睡眠さえも取り立てようとするのか
敵意もむき出しに

駅を走る
時計が秒を刻み
僕を乗せない電車は
出発の鐘にけたたましく祝福された
へまをした奴と憐れんだ顔をした
電車の中のニヤニヤ顔が
脳裏にへばりつく
べっとりとした
人間のにおいにむせぶ

金属を打ち鳴らし続く工事は
宙へ宙へと際限なく伸びる
青ざめた顔が
疲れた上目づかいで呪詛する

小さな窓は青空に開かれて
その先に高く鳥を飛ばしたい
煌びやかな音符をついばみ
戻るように命じて
激しく渦巻くつむじ風
もだえる断末魔の
都会のノイズを打ち消すために