風のささやき

西方へ

獣じみて 息を荒くしていた一日を
優しい夕映えが 柔らかな舌の様に癒し
揺れるポプラの赤い手が 柔らかく風をつかむと

その高い梢のさらに上
金色に棚引く雲に あまねく光をこぼして
静かな瞳のように まわっている日輪 

あの遠いところにあるという 幸いの西方の国
その国からこぼれ落ちる 金色の破片に身を焼こうと
黒く小さなこうもりさえも 赤い風に空を迷って

毎日 誘われる 高い空の国の調べ
できることならば 帰りたい 僕も
西方の国よりも きっと遠いどこかへ
子供の日の夕刻 置き忘れてきた歌に
耳を澄ますような 懐かしさのまま

日々の悔恨さえも 淡く色づいている
胸に祈りの手をおき
この体を足下から 静かな西日で 燃やして