風のささやき

終焉

追い越してゆく 子犬と子供が 
大きな夕日に 飲み込まれ消える
跡形もない 火を点されて 骨までのこらず
河原の草は炎の縁取り 鎮魂に震えて

ゆらめく不確かな 風景は滅びの兆し
心臓を寂しく 締め付ける一番星
苦しそうに 横たわる川は
黒光りする 蛇のようにうねる
鉄橋を渡る オレンジの電車
ひたむきな面持ちの 鉄のかたまり
夕映えの空の下には 点火をされて
今にも破裂しそうな ダイナマイトのビルの群

錆びた膝の 歩みは進まない
関わりのない 出来事ばかりの世
ほんとうはもう 眠りたい
だって悪戯に 何一つ
わからないでいる 僕だから

痣のように 紫に変容する空に
火の道が続く
子供のように 背負って甘えさせる
父や母の姿もなく

夕日に焼き尽くされた
あの子供のように 燃え上がりたい
果てることない 悪戯のような
寂しい営みの日々の 痛みなき終焉のために