風のささやき

白い朝

白く燃え立つ夏の朝 僕の心は
やがて消えていく 白い喪失の悲しみ
炎のようにうずまき 祈りに差し出す両手から
窓にこぼれる 朝日に焼かようと

さっきまで 僕を泣かせていた
夢は消え去った 涙の跡だけを残し
風にちぎられた 白い花のように 散れ散れに

放心した 僕の脳裏の地平には
わき上がってくる 雲のように
白い墓標に眠る日々が
涼しい一群の風に
青春の涙よりも淡い色で 吹かれている
ー夏の葉の照り返し 遠くさわぐ子供の手足
 とんぼの乗る静かな時間 光りを集める小川のせせらぎ
 涼しく 肌を打つ通り雨の清らかさ
 星をつかもうと 差し出した手の穏やかさ
 もう声も思い出せない あなたを見ていたときの胸の高鳴り
 くったくもなく 語り合って楽しかった午後
 そうして一人夕日に 流したともどもない涙
僕に眠り 何も言わずに僕と滅んでいく
誰にも渡せない風景 けなげな生のかたみ

何のために新しい朝は 僕を眠りから呼び起こし
僕に悲しみを増やしていくのか
失われていくだけの 僕は羽根を生やし
飛び立って行きたい 開け放たれた空へ
すべてのものが 心から許され
受容される 大きな腕の中へ
蘇る者達と 静かに 瞳をかわしていたい