風のささやき

春の日に

あなたと見る
川べりの菫は優しい気持ちをくれる
あなたの口ずさんだ
軽やかな歌声は蒲公英も聞いた

つながれた僕らの
手をにぎる春風は
もう何人と握手をかわしてきたのか
汗で湿ってしっとりと濡れ
あるいは疲れを知らない
小犬の舌のように

河原いっぱい鬼の角のように
いばって芽吹く土筆には
空の青さと柔らかな雲は遠く
けれど届くことができるものとして
伸びてゆくのだろう
おだやかな希望 夢見る速さ
急速に緑の髭をはやす大地に

穏やかさを羽にまとい
菜の花を渡り歩くモンキチョウのように
身軽になった僕らを
春はその体の一部にする

空高くひばりの声が澄む
きらめいた川は鼓動を早める
小さな花が一つ一つ丁寧なおじぎをする
暖かな陽射しにくるまれた
心の楽しさを
そのままに春風に渡そう