風のささやき

すべてを

僕はすべてを
 感じるものでありたい
  高ぶる一つの調べとして
 震えてやまない
弦の響きにも似て

星が夜のしじまにかわす
 人の聞かない囁きを

  虹の上をすべって降りる
   雨粒の動く速さを

    山の斜面に一人咲く
     白い花の純潔を

  土の中に眠る
   固い種子の生命を

動物の瞳に映る
 ゆっくりとした雲の流れを

  とんぼの羽に乗る
   透明な夏の輝きを

    湖の上にさざ波をたてる
     小さな風の群の遊びを

  太陽が焼いている
   焦げ付く肌のうめきを

 夜風の中にまぎれこむ
  青白い死者の語りかけを

子供のかすかな寝息
夢の中の微笑みを

 眠れない人の吐く
  溜息の重さ

   頬をつたわるあなたの涙
    雨のように僕をも濡らす
     その悲しみのわけを

すべては僕にとけあい
 後はただ
  一つの終わりなき詩となって
 いつまでもいつまでも遠く
響きながら流れて行く・・・・・