風のささやき

ある日に

あなたの瞳には
穏やかな青空が憩い
白い雲はなんの憂いもなく
あなたの額をゆっくりと流れる

僕の問いは
共有のないあなたの
平穏の前にたたずむ
きつく閉ざされた戸口に立つように
(僕の瞳には映らないその穏やかさ)

流れ途絶えする風は
独り言の捨て場所
届かない思い
ちぎっては捨てる
手紙の文字の
読みとれない文節の亡骸

尖ったバラの棘の
触れられない造形を眺めるように
思いはあなたの周りを虚しく
答えもなく巡るばかりで

僕の心はなぜ
こんなにも満たされず
いつでも乾いて
今も いら立っている
疲れ 焦燥しきっている

手をつないでいる
瞬間からも痛んでゆく
あなたの印象を
胸に重ねながら
(バラの刺に指さす痛みにも似た)

あなたにも聞こえない
故郷の歌を
心が奏でるがままに 一人
また歌いださなければならない