風のささやき

川縁を歩いて

広い川縁を
あなたと歩いた日曜日

春の風に誘われて
土手には顔を出す野の花

すれちがう人の肌に
うっすらと汗が
浮かぶ程の陽気に
久しぶりに
歓声の上がる野球場

僕らは
言葉の多くを語らず
ただ春を体に
吸い込むだけで
火照る手足に
冷をとるため
近づいてゆく川のほとり

指先をそっと
水に濡らしてみると
冬の冷たさを川下へ
押しやってゆく
流れには小さく
速い魚影

つくしの背丈ほどに
身をかがめて
春の花にふれる
あなたの肩越しから
僕が吹いて飛ばす
タンポポの種

その軽やかに
上ってゆく
視点から見上げた空には
白く流れ行くいくつもの雲
新緑にけぶる
梢にかかりそうな低さに

その中の
一番白く上等そうな
地の上の涼しいベットに
僕はあなたを連れて
日曜のひとときの休らいに
いつまでも憩っていたかった