風のささやき

春の日に

並木道に若葉が
繁るよりも少し早く
春は通りを歩き始めて
微笑むあなたの肩ごしから
心地よい風を送った

人の顔から険しさも抜けた
春の街いろどる花の名前を
あなたは指さし教えてくれた
暖かな陽光を浴びながら
それに似合った
ゆっくりとした歩調で

あなたが与える花の名前は
軽やかな蝶のように
舞い降りてくる
魔法のように
目の中の花の色を解き放ち

僕の心も
春のように笑うあなたに
花開く
むせかえる香りのかわりに
溢れ出す言葉を語り出していた

僕はこんなにも
お喋りだったかしら

春に誘われて
一斉に顔開く花々
あなたの周りは
まるで花が吹雪くよう

歩き疲れてベンチに休めば
小枝の網目から
透ける陽光 キラキラと
あなたの体にまとわりついて

まぶしくて どぎまぎとして
目を細めたりをする
僕だった