風のささやき

冷たい夜へ

あなたへとつながる 水脈をなくして
淀んでしまった心は 胸の内深くで渦巻く
光りなきところ 暗い海底へ

プランクトンの死骸
僅かに残っているちっぽけな誇り
マリンスノーの仄明かり
奇妙な顔の深海魚が
闇から上がってきては睨みつける

暗緑色の沈黙 ぞくぞくと肌寒いところ
この息苦しさにどこまで
耐えることが できるだろう

震える弦の音で
呼び起こしてくれる人は もういない
夜ごとに 風をはらむカーテンから
忍び込むのは 泣き言ばかり

やるせなき 夜のテーブルに一人
アルコールを垂らし 酔いにまかせて眠る
干からびた月は早送りの夢を見せる

渇いてしょうがない喉がいやせない
目に映った 空の穏やかさは
忌むべき 思い出として

悲しまないように 無感覚になる
無痛になる 麻酔をうつ 目に映るものが
ただ網膜に 過ぎて行く
僕を取り込まない 映像として

時折は 奇妙に唇をゆがませて
笑顔を 浮かべようとして
まだ生きていると
小さな存在感を 示している