風のささやき

闇の中へ

赤い血潮を垂れ流し
水平線の向こうに
死に絶えた夕日
浜辺へと打ち寄せるのは
その黒い亡骸

重たい闇にやがて
縛られるように億劫に
動くことを波はやめ

まるで僕らの
傾き消える時間
貪欲にもたくさん
飲み込んで余りある闇に

夜の訪れを
冷たい潮風が肌に知らせるときに
無為に過ごした時間は
首に爪を立て復讐するのだ
その痛みに流す涙も
闇に飲みこまれ
誰も気づくことはない

戻らない日々を思いながら
闇の中に立ち尽くして
枯れ木のようになって
呆然とすることしかできなくなる
やがて きっと