風のささやき

ある日

お前はもう
帰って行くんだ
僕らよりも先に
さらさらと手元からこぼれる
冷たい土の下へと。

僕は思う
大地がお前をきっと
楽しく遊ばせてくれる所へと
運んで行ってくれると。

今朝
針金細工のように硬直した
小さな黄色い体
あっけない死を手に乗せて
悲しみとともに
思っていたのは
僕の惰情さ
後味の悪い悔いだった。

思えば昨夜
元気のなかったお前が
無性に外に出たがっていたのは
今朝の死を感じとって
いたからなのかもしれない。

お前が楽しく
生をおくれたということだけが
僕の唯一の慰めになるから
それを信じさせてくれる
思い出を胸に
お前の遊び相手だった
色あせた鈴も一緒に埋めるから

今は冷たい質素な墓のまわりが
春になって
野の花で飾られるような時分に
暖かい陽の中で
遊びぼうけておくれ

お前の羽ばたきを
小さなかごに閉じこめて
邪魔するものは
もう誰もいないから。