風のささやき

ある日

ビルの屋上から 見下ろす
小さな 売地の一画
鉄線で囲われた
あれは母なる大地の 捕獲された姿
雑草にあれ果てた顔だ

長方形に切り取られた土地
切手を貼り付けるように
ぺたんと住所を押し当てられて
「売地」と名付けられた
お問い合わせの電話の
先にいるのは誰

古い家に囲まれて
窮屈で息も 詰まりそうな土地に
鉢植えの花は 咲き誇ったのだろうか
どんな夢が そこに持ち込まれ
腐れていくのか

切り分けられた母を
助ける 術もない僕は
高層ビルの一部屋で 宙ぶらりん
青空と大地の間で
通り過ごすだけの 生を
消化不良のまま 飲み下して

焼かれる体は
コンクリートの墓の中
母の胸に
眠ることすらも ままならない