風のささやき

洗い立て夏空に干す黴臭き涙の跡の歳月も干す

溜まってしまった沢山の洗濯物を
ベランダの物干しに干しました

夏の空には幾つかの雲が流れ
陽ざしは強いのですが
強い風が心地よく吹いてきます

風は僕の心の中にも吹いてくるようで
その風に捲られるように
僕は幼い頃の夏の風景を思い出していました

それはどこか涙の染みて
開いてみれば黴臭い感じもして

しめったようなそれらの思い出と
そこに込められた気分とを
洗濯物と一緒に干すように

僕はしばらくベランダで風に吹かれて
どこか心が軽くなった感じがしていました