風のささやき

頭から闇に飲まれる鉄塔や怖くないかい消えて行くのが

夕暮れ時のことでした
背の高い鉄塔が
僕らよりも先に夜の闇に飲み込まれていました

かすかな夕日がその鉄塔の先頭で光っていたのですが
その光りもやがて消えうせ
闇は僕らの方へ向って降りてきます

冬のこの時期の闇にはおかしな不安を覚えます
その中に沈んでしまうと
もう出てこれなくなってしまうのではという不吉な感じ

身じろぎもせずに立っている鉄柱が
実は恐れをなしているのではと思い
僕は鉄柱に向けて声をかけました
自分の不安な気持ちを和らげてくれる言葉が
返ってこないかと思いながら