風のささやき

匂わねば自分の姿にあらざりとレンズいやがる白い梅

梅を見にいったときのことです
時期がよかったのでしょう
ほとんどの梅が八部咲きで
あたりを賑わしていました

自分の目線のところにも
たくさんの梅の花がひらいて
そのかすかな匂いを嗅いだり
じっと花の形を眺めたりと
僕は楽しんでいました

せっかくだからと
白い梅の花にピントを当てて
持っていたカメラで写そうとしたら

匂いもしない写真の中の自分は
自分ではないからとでも言うように
僕の向けるレンズをいやがり
何度も風に頭を揺らしていました