風のささやき

元気でと稲撫ぜる風夏の果て

稲が実り始めた田の間の
あぜ道を歩いていました

時折僕が近づく足音に驚いて
飛び上がるバッタ以外には
物音を立てる者もいない
静かな午後の一時でした

随分と実ったものだなと
僕が稲の穂先に触っていると
稲を撫で付けるように
一陣の風が吹いてきました
まるで稲を愛おしむように

もう辺りには秋の気配
もうすぐ去らなければならない夏が
名残惜しげに告げる別れの挨拶に
僕も触れてみようと目を閉じました