風のささやき

手袋も置き忘れられ温き朝

その日は朝から
随分と暖かく感じられました

口からは白い息が漏れることもなく
いつもはコートをしっかりと重ねながら
通り過ごす風も柔らかで
自然と歩みも速くなるぐらいです

そんな穏やかさに
油断したしたのでしょうか
駅の椅子に手袋が
置き忘れられていました

手袋がなくても気にならず
そのまま電車に乗って
持ち主はもうどこかへ
行ってしまったのでしょう

今日はあまり
役に立ちそうもない手袋は
気づかれることもなく
そこに置かれたままでした