風のささやき

赤子抱き膨らみきった冬着かな

僕の目の前を
少し年をとられた女性が歩いていました
ゆっくりとしたその歩調に
僕はさっさと横を通り過ぎようとしたのですが

その女性の白い冬着が
胸のところで随分と膨らんでいます

何だろうと思い
思わず覗き込むと
そこには小さな赤ん坊の姿

きっと寒くないようにと
冬着の中に収めていたのでしょう
その心地よさに赤ん坊は少し眠気眼をしていました

その女性の歩みが
ゆっくりだったわけを了解していた
冬の午後でした