風の約束 〜花片の行方〜
舞い散る花びら。コトノハが目で追った先には、道端に立つ、満開に咲き誇った、一本の古いアルカの樹。その姿はまるで、生と死の饗宴を想像させる。
コトノハは思う。
こんなにもこんなにも美しく精一杯に生を謳歌しながらも、同時に死をはらまずにはいられない。これこそが生の祝福であり、誰も逃れることのできない呪縛。
ならば、完全に凍てついて腐らないままでいた方が、どれだけましか・・・・・・。そう思えてならない。いっそ、このまますべて、あきらめてしまって・・・・・・
「終わることは、哀しくなんかないよ。ちっとも」
「こんなにも一生懸命に咲き誇って・・・・・・、それだけで、もう十分だよ」
コトノハと同じく、アルカの樹を見上げていた少年が、まっすぐにコトノハの瞳を見返した。
「ここにいる。僕たちはこうして。あきらめることはないよ、決して・・・・・・」
キリテの言葉が、微笑が、コトノハのこころを動かした。それはさらに奥底にある、凍てついたものも同時に動かすことになるのだが、それが何を意味するのかは、まだ誰にもわからない。
これがふたりの、キリテとコトノハの出会いであり、ひとつのはじまりだった。