瑠璃の森


深い闇を抜けて、彼はひとり、影の国、瑠璃の森を行く・・・・・・。

入り口はとうに見失い、出口がどこにあるのか見当もつかない。
何かに追われているわけではない。何かを追い求めているというのでもない。


さらに、どれだけの時間が過ぎたか。
その小さな花が、ぽつりと咲いていたのだ。病みついた、震える美しい白い花・・・・・・。


見つけた。


その瞬間、彼は何故かそう思った。知らず知らずのうちに、その頬に微笑が浮かんでいた。
「俺のものだ・・・・・・。わたしはしない、誰にも」
彼は、そうささやいた。


彼は、オロチ。
やがてオロチは静かに浮かび上がるだろう。オロチは世界に死をひろげようとしていた。



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