ヘンリー・カウは1968年ケンブリッジ大学でフレッド・フリス(g,vio,key)とティム・ホジキンソン(key,sax)のふたりを中心に結成されピンク・フロイドとのジョイント・コンサートでデビューする。その後69年にジョン・グリーブス(b.p)、71年にクリス・カトラー(ds)、72年にジェフ・リー(sax)が加わり強力なラインナップが揃い精力的にライヴ活動をこなし73年8月ファースト・アルバム「Legend」を新興レーベル
Virgin より発売。このアルバムは複雑かつ緻密な作曲と現代音楽的な曲やフリーフォームな演奏を見事なアンサンブルで聞かせています。翌74年サックスのジェフ・リーが抜けリンゼイ・クーパーが加わりセカンド「Unrest」を発表。前作よりさらに現代音楽色を強める。そして次の新作を録音するにあたり歌を欲した彼らは、ドイツ出身の無国籍ポップバンドのスラップ・ハッピーと意気投合し合体することになる。
スラップ・ハッピーは1971年にイギリス人のアンソニー・ムーア(key,g.vo)とドイツ人の奥さんダグマー・クラウゼ(vo)にアメリカ人のピーター・ブレグヴァッド(g,vo)
の3人でグループを結成。アンソニー・ムーアはデビュー以前からドイツのロック・グループ、ファウスト達と深い交流があり実験音楽を演っていて、71年と72年に2枚のアルバムをファウストの協力の下に発表していた。その関係でスラップ・ハッピーもファウストの協力のもと72年に「Sort
Of」でデビューし、翌73年2枚目を録音するも1作目が売れなかった為にお蔵入りになってしまうが、74年に Virgin から新たに録音し直して「Slapp
Happy」としてアルバムが発売された。
74年の暮にスラップ・ハッピーと合体したヘンリー・カウは、75年2月にスラップ・ハッピーの主導のもとに制作されたアルバム「Desperate
Straights」を発表。ポップでありながらなおかつ緻密でアバンギャルドな楽曲はこれまでに例をみないすばらしいものだった。続いて今度はヘンリー・カウ主導のもとクーパーも加わり「In
Praise Of Learning」を発表。フリーな小曲とダグマーのヴォーカルが素晴らしい緻密な構成の大曲が収められた傑作となる。その後アンソニー・ムーアが脱退しピーター・ブレグヴァッドはバンドから拒絶されてしまい、ダグマー・クラウゼが引き抜かれた形となり、76年にロバート・ワイアットと共演した75年のヨーロッパ・ツアーのライヴ・アルバム「Concerts」を発表しますが、3月にはジョン・グリーブスもブレグヴァッドの後を追うようにアメリカに渡ってしまい残った3人はジョージー・ボーンというチェロ奏者を加え活動します。しかしその後
Virgin レーベルに契約を切られてしまい78年のクーパーを加えたヨーロッパ・ツアーを最後に解散してしまいます。同じ年ホジキンソンとクーパーが最後のツアー用に書いた曲をまとまめ、アルバム「Western
Culture」を出しています。
ヘンリー・カウの解散を前後しフレッド・フリス、クリス・カトラー、ダグマー・クラウゼの3人は新しいユニット“アート・ベアーズ”を結成し78年〜81年までに3枚のアルバムを発表。ホジキンソンはソロとして活動。リンゼイ・クーパーはソロの他、カトラー、クラウゼを加え
NEWS FROM BABEL というユニットでアルバムを発表。
アート・ベアーズ解散後のフレッド・フリスは MASSACRE や SKELETON CREW 等を結成しながらもソロや多くのユニットに参加し精力的に活動中。(その後の活動についてはフレッド・フリスのページを参照)
ピーター・ブレグヴァッドはイラストレーターとしても活躍するなかジョン・グリーブスとのユニットやソロとしても活動。ダグマー・クラウゼもソロやユニットなどで活動するなか。驚くことに98年スラップ・ハッピーが純粋なる新作「CA VA」を発表し、2000年にはライヴ活動をほとんどしていなかった彼らがなんと来日してすばらしい演奏を披露してくれました。感激!!
その時のライブはCDとして発売されました。
|
SLAPP HAPPY「Sort Of」 ファウストが演奏に参加しているデビューアルバム。 |
|
SLAPP HAPPY「Slapp Happy(Casablanca Moon)」 独ポリドールから発売拒否された2nd(Acnalbasac Noomとして80年に発売)を録り直して発表された2枚目。実にセンスの良いなんでもありの傑作ポップアルバム。カサブランカ・ムーンは名曲! |
|
Slapp Happy/HENRY COW「Desperate Straights」 ヘンリー・カウと合体して作られたアルバム。スラップ・ハッピーのポップな面も生かしつつもアヴァンギャルドで複雑な曲を大胆に聴かせるダグマーの唄がすばらしい傑作! |
|
SLAPP HAPPY「Acnalbasac Noom」 73年に録音されながらもお蔵入りになっていたアルバムが目出度く発売。1作目同様にファウストのメンバーが演奏に参加して、より魅力的なポップ・サウンドを聴かせる。 |
|
HENRY COW 「Legend」 ヘンリー・カウの1st。 |
|
HENRY COW 「Unrest」 現代音楽的な楽曲とフリー・インプロヴィゼイション色を強め、より過激に聴き応えのある作品に仕上がっている。 |
|
HENRY COW 「In Praise Of Learning」 スラップ・ハッピーと合体し歌物に挑戦した「Desperate Straights」に続きヘンリー・カウ主導で製作。アバンギャルドで緻密な構成の大作とフリーな小曲を交互に聞かせる構成。 |
|
HENRY COW 「CONCERTS」 75年のロバート・ワイアットの共演もうれしい2枚組ライヴ盤。1枚目は緻密にアレンジされたナンバーを2枚目にはインプロヴィゼイション・ナンバーが収録され何度聞いても刺激に満ちたアルバム。 |
|
HENRY COW 「Western Culture」 最後のツアー用に書かれたホジキンソンの曲をA面にクーパーの曲をB面に配した硬質で緊張感あるナンバーが聞ける傑作。 |
|
SLAPP HAPPY「CA VA」 23年ぶりとなる純粋なスラップ・ハッピー再結成最新アルバム。昔のアヴァンギャルドさは控えられたが良質でポップなアルバムに仕上がっています。生きてて良かった。 |
|
SLAPP HAPPY「Live in Japan - May, 2000」 奇跡としか思えないスラップ・ハッピーの2000年に実現した来日公演を収めたライブ盤。彼らのキャリアの中から満遍なく選曲された内容で、当日が夢ではなかった事を証明! |
[ ART BEARS | NEWS FROM BABEL | THE WORK | Fred Frith | Chris Cutler | Peter Blegvad | John Greaves | Anthony Moore ]