side−B −大地の御子4− 豪 高校2年3月後半〜


 豪が天野家を出てすぐに、怒った智が和紀に詰め寄った。
「お前はそんなに自分1人だけ良い子ちゃんでいたいのか? 生が居ない時くらい俺が豪の側に居ても良いだろう」
「豪がまともな状態だったら、僕も千寿子さんに泣き付いたりしないよ。智だって今の豪が普通じゃ無いって判ってるよね。あんなに不安定で無防備状態の豪をこの家に置いておけるほど、僕は自分に自信が無いんだから」
 睨み合う2人に、ソファーに腰掛けた愛が両手で頭を押さえて訴える。
「2人共、お願いだから喧嘩は止めて欲しい。生が居ない上に豪まで居なくなって、僕も超能力を抑えるのがやっとなんだ」
「文句は和紀に言え」
「智が1番危ないんだからね」
『いい加減にしなよ! 本気で怒るよ』
 キンと脳に軽い衝撃を受けて、智と和紀は頭を押さえてその場に膝を付いた。
 愛が怒りのままに超能力を解放すれば、2人の精神は簡単に崩壊する。それほどの超能力を持つからこそ、愛はいつも自分の感情や超能力をセーブしていたのだ。
 生の癒し能力はずっと愛の超能力が暴走するストッパーになっていた。豪の嘘の無い素直で優しい感情は、触れているだけで愛の心を穏やかにしていてくれた。
 その2人が居ない状態で、強い能力者の智達が出す負の感情に触れるのは、テレパスの愛にとって苦痛でしかなかった。
「部屋で瞑想する。僕は誰も傷付けたくないから邪魔をしないで」
 そう言い残して愛は2階に上がって行った。
 残された2人はずっと黙って睨み合っていたが、しばらくして愛の呼ぶ声で急いで2階に駆け上がった。

「豪からメールが来てるって?」
 和紀が後ろからモニターを覗き込むと、愛が笑って頷いた。

 愛へ
 約束が守れなくてすまない。
 パソコンでのメールは初めてだな。
 今、千寿子の目を盗んでこのメールを書いている。
 本当は資料に目を通さなくてはいけないんだが、読んでばかりいると息が詰まる。
 ばれたら怖いがその時はこれも練習だと言っておくか。
 千寿子とはチャットで話している。
 目の前に居るのにいちいちキーを打つのはもどかしいな。
 じゃあ、また連絡する。

「多分、2人にも同じようなメールが行ってると思う」と愛が笑う。
「チャットか」
 智がにやりと笑い、和紀の顔を見る。
「ばれないように社内RANに細工をして仮サーバーを作る。チャットのCGIを入れて、3つのIDとメールアドレスを用意しするよ。直接豪に会えないけどそれで良いよね」
「充分だ。上手くやれよ」
「まかせて。システム管理部にも見つからない道を通してみせるから」
 和紀は走って部屋に戻っていった。智も部屋に戻って自分のパソコンを立ち上げる。
 案の定、豪からメールが届いていた。

 智へ
 約束が守れなくて本当にすまない。
 なるべく早く終わらせて帰るからな。
 それまで智が辛い夢を見ない事を祈る。
 
 本当の事情を何も知らない豪からのメールに智は破顔する。
(俺は大人しく待つっていうのが1番我慢できないんだぞ)
 和紀から準備完了の連絡を受けて、智は速攻で豪にメールを送った。


 動物達と寝食を共にしていた生は、猪の親子に連れられて更に森の奥に向かって歩いていた。
「セイイキ? ああ、聖域だね。人間だけが入れる場所? この森の中にそんな場所が有るんだ」
 猪はこれ以上近づけないからと立ち止まり、首を振って先に行く様に促すので、生は礼を言って森を進んで行った。
 視界が開けて目の前に岩山が見えた。
「ここって千寿姉ちゃんが正月に踊った所だ」
 振り返ると猪だけでは無く他の動物達も生の様子を遠巻きに見つめている。
「分かった。ここで俺は強くなれるんだね。今まで本当にありがとう」
 散々愚痴をこぼし続けた生へ、口々に激励を送ると動物達は去って行った。

(千寿姉ちゃんが唯一大地と交信できる場所で、天ノ宮家の聖域。兄ちゃんってば千寿姉ちゃんに見とれてて半分くらいしか判って無かったよね)
(天ノ宮の直系でも巫女でも無い男の俺が立ち入って大丈夫かな?)
(……ううん。俺が強くなるにはここじゃ無いと駄目だから、尻込みしてちゃいけないんだ)

 生は大きく息を吸って千寿子が清めた聖域に足を踏み入れた。
『天ノ宮の血を強く受け継ぐ御子よ。今までどれほど呼んでも来る事を拒み続けた御子が、何用が有ってここに来た?』

「本当の強さが欲しいから」
 洞穴から響く声に生は正直に答える。
『本当の強さ? 何故にそれ以上の強さを望む?』
「兄ちゃんを本当の意味で守りたい。でも、今の俺のままじゃ守りきれないから」
『巫女に選ばれた次次代護人候補の若者の事か?』
「うん。俺の1番大事な人なんだ」
『兄を守る力が欲しいか。只、それだけの想いでここまで来たか。……それも良かろうよ。御子は本来ならばもっと早く来るべき存在なのだから。入るが良い』
 声に促されて生は洞穴に入って行った。暗闇の中に1枝の榊を見つけてそれを手に取る。
「俺の全てを解放する。だから教えて。本当の強さ、本当の正しい道!」


 和>それは技術開発部の仕事。基礎研究部門では試験用でも量産は一切しないんだよ。
 豪>解った。ありがとう。

 豪>国外での医療活動って何だ?
 愛>製薬部門と医療部門の担当だね。主に発展途上国での安い価格での治療行為。本当はもっと安く提供したいけど、営利企業だから赤字は出せないのが辛いね。

 智>政治に口を出さないのがAMANOの基本スタンスだ。金を欲がる奴らは多いが相手にしてられるか。
 豪>ごもっとも。

 千>どこまで読めたの?
 豪>まだ全社概要の序章だ。部門が多過ぎて混乱する。
 千>興味が有る部門からで良いわよ。
 豪>そうする。

 豪はパソコンの画面に4面のチャットと社内資料を出していた。
 千寿子の顔色を窺いつつ、天野家にいるメンバーと会話を続ける。
 ビジネス用語ばかりの会社資料より、智達の説明の方が解りやすいのでどうしてもチャットでの会話が多くなる。
 顔を上げた千寿子が「今日はここまでにしましょう」と言ったので、豪は急いで他メンバーとのチャット画面を終了させた。

 広いテーブルの両端で2人だけで夕食を食べる。
 いつものおかず争奪戦と会話が無いので、豪は物足りなさを感じた。
 当然の様に黙々と食べている千寿子を見て、ふっと思いたった。
「いつも1人でご飯を食べているのか?」
「ええ。愛を養子に出してからはそうね。両親は滅多に家に帰って来ないから」
 やはりと思いながら豪は遠慮がちに聞く。
「その、千寿子はこういう生活をしてて寂しく無いか?」
「慣れたわ」
 寂しいと言ったら、絶対あなたは困るでしょう。とは、千寿子は言えなかった。豪の感情は解りやすい。傷つけると解っているのに言えるはずがない。
 広過ぎる屋敷の中で、使用人達に囲まれていても1人きりで仕事をし、誰とも会話せず食事をする事にあっさり『慣れた』と言える千寿子に、逆に豪の胸は痛んだ。

 豪は千寿子に案内された部屋に入ると、部屋の広さと調度の豪華さにたじろいだ。
 20畳程の広さは有る部屋に、天蓋付きのキングサイズのベッド、上品な彫刻とカーブを描くテーブルと、2人掛けの刺繍張りのソファーが2組、続き部屋に簡易キッチンと専用のシャワールームや洗面所まで付いている。
「こんな部屋で俺に寝ろって? もう少し地味な部屋は無いのか」
「ここで寝るくらいなら物置で寝たいとか言わないでよ。うちではこれが家族用で普通なの。客室はここより更に豪華な一流ホテルのSクラス並。その方が嫌でしょう」
 根っからの貧乏性の豪はこれ以上は嫌だと諦めて頷いた。
「たしかに家の格ってもんが有るからこうなるんだろうが。……あのベッドは見覚えが有る気がする」
「何を言ってるの。生用に送ったのを即日でうちに転送したでしょ。至急で手配させた物を店に返送する訳にもいかないから、ずっとこの部屋に置いていたの」
「やっぱりあれか」
 1年前に寝ぼけた愛が事件を起こして、パジャマ姿で本邸に怒鳴り込んだまでは良いが、意趣返しとばかりに千寿子から豪華なベッドを配送された。被害者の生以外が激怒して、速攻で和紀が本邸に送り返した経緯を思い出した豪は苦笑した。
「ベッドサイドに電話が有るわ。わたしの部屋の内線番号は#03。ここは#04。何か用が有ったらそれで連絡してね。今、わたしの携帯は使えないの」
 そう言って千寿子は部屋を出て行った。
 見慣れた応接室よりもずっと高そうな椅子は、1脚でいくらするんだろうかと思いながら、豪はそっとソファーに腰を下ろす。
 部屋全体を見渡して、本家と自分達は住む世界が全く違う事を再認識させられる。
 クローゼットに持ってきた服を入れようと扉を開けて豪は絶句した。まさかと思い引き出しも開けて中身を確認すると、急いで電話を手に取った。
「千寿子。何でこの部屋に俺のサイズの服が有るんだ? しかも靴まで何足も有ったぞ」
『何を言うのかと思えば今更そんな事。だって、そこはあなた専用の部屋だもの。言ってなかったかしら』
「聞いてない!」
『使わなくても形だけは整えないといけないでしょう。一応、婚約者(仮)なんだから』
 その言葉を聞いた瞬間、豪は電話を切った。
 嘘が苦手な豪にとって、千寿子の婚約者を演じるのは心臓に悪い事以外の何物でもない。
 以前シャワーを借りた時に服が一揃い用意されていた理由がはっきりして、あらためて自分の置かれている立場から逃げ出したい気持ちになった。
 受話器を置いた千寿子は相変わらずの豪の往生際の悪さに微笑する。
「本当に自分の立場を全く理解していないのよね。まぁ、それが豪なんだけど」

 豪はうっかり中で寝ようものなら水死しそうな広さの浴槽に辟易としながら汗を流して、用意されていたパジャマに着替える。
 ナイトガウンをクローゼットで見つけたが、とても落ち着けそうもないので持って来たいつものフリースのジャケットをはおる。
 ムートンのスリッパに閉口しつつ少しでも落ち着こうとテラスに出た。
 白亜の大理石の手すりに腰を掛け、周囲を見渡すと隣のテラスに千寿子の姿が有った。
「千寿子? 部屋は隣だったのか。以前1度だけ行ったはずだが気付かなかった」
「その部屋は以前は愛の部屋だったの」
「なるほど」
 納得して豪は森に視線を向ける。
 何かを捜しているような、じれったいような豪の横顔を見て千寿子が声を掛ける。
「生が心配?」
「心配に決まっているだろう」
「そうね。ごめんなさい」
 少しだけ怒った声音を出す豪に、千寿子も「当然だわ」と頷いた。
「豪、生に会いたい?」
 千寿子の言葉を聞いて、豪は手すりから飛び降りると隣のテラス側に駈け寄った。
「会えるのか?」
 豪の真剣な眼差しに千寿子は少しだけ首を傾げた。
「直接会う事は無理だけど、遠目に視るだけならできるわ」
「少しでも良いから生の様子を知りたい」
「分かったわ。部屋に戻って」
 豪が急いで部屋に戻ると、納戸だとばかり思っていた扉が開けられ、寝間着にレースのガウン姿の千寿子が部屋に入ってきた。
 豪が目を丸くして千寿子の顔を見つめる。
「……続き部屋だったのか」
「鍵は無いから自由に行き来できるわよ」
 あっさりととんでもない事を答える千寿子に、思わず豪は顔を覆った。
「千寿子、俺にこの部屋を使わせるならそっち側に鍵くらい付けろ。それと、自分の家とはいえ、若い男の前にそういう格好で出てくるんじゃない。せめて部屋着に着替えてからにしろ」
「その台詞、あなたにだけは言われたく無いわね。それにあなたは正月にわたしから榊を受け取ったでしょう。その意味が解らないほど間抜けじゃ無いでしょうね」
「え? あーっ!」

『枝が自分を若者に渡すように言うので娘はそのとおりにしました。不思議な縁で出会った娘と若者は夫婦となりそこに宮を建てて森の護人となりました』

 千寿子の詠唱を思い出した豪は、自分が親族の前で千寿子の正式な婚約者だと認める行動をとった事に漸く気付いて大声を上げた。
「やっぱり解って無かったのね。あれで親族達も納得したみたいだから、わたしは楽になって良いのだけど」
 軽く肩を竦めた千寿子は、ベッドに腰掛けると豪に手招きをした。
「……」
 豪は真っ赤になって後ずさったが、「生の姿を視せるから」と言われてしぶしぶ千寿子の横に座る。
「豪、右手を出して目を閉じて」
 言われるまま豪が差し出した手の平に、千寿子は自分の手を重ねた。
「これは今朝わたしが視た生の姿よ。今の姿は視えないの。ごめんなさいね」
 生は猪の親子と一緒に、巣穴の中で気持ち良さそうにざこ寝をしていた。
 豪は「生らしい」と笑う。
「そうね。食料を分け合ったり、森の動物達ととても上手く付き合っているわね。生の超能力は人間以外にも通じるのね」
「本当に誰とでもすぐに友達になるからな」
「これでおしまい」
 千寿子は豪の手を離して立ち上がった。
「今は本格的に修行中とだけ言っておくわ。わたしにも視えない場所に生は居るの。でも、元気でいる事は保証するわ」
 目の奥に焼き付いた生の残像に何度か瞬きをして豪は、千寿子の顔を見上げる。
「ありがとう。少し安心した」
「どういたしまして。おやすみなさい」
「おやすみ」
 千寿子は笑って部屋に戻って行った。
 豪は生の安らかな寝顔を思い出して微笑むと、キングサイズのベッドの隅でぐっすりと眠ったのだった。

 智>そのシチュエーションで何も無かったのか。お前、男としてどっかに欠陥が有るんじゃないのか?
 豪>どういう意味だ?
 智>そのままの意味だ。
 豪>俺は普通だ。
 智>今時AVを観て鼻血を噴いて失神する17歳が居るか。

 豪>うるさい。免疫が無くて悪かったな。
 愛>何に免疫が無いって? 今、大学院の話をしていたんじゃ無かった?
 豪>あ、智宛と間違えた。すまない。

 和>リロードしてもなかなか返事が来ないけど、僕が出した問題難しかった?
 豪>悪い。今ちょっと智とやりあっていた。えっと、加速度だから「x=2乗」で合ってるか?
 和>合ってる。けど、智と何の話をしていたの?
 豪>……。
 和>1対4チャットだから慣れない豪は大変かもね。文章だとどうしても誤解を招きやすいけど、喧嘩までしちゃ駄目だよ。
 豪>誤解も何も智が俺が男として欠陥品だって言ったんだ。
 和>何それ? 一体何の話をしていてそんな会話になったの?

 部屋>智さんが入室しました。
 智>豪、こっちで俺の愚痴を言っているだろう。
 部屋>愛さんが入室しました。
 愛>面倒だから僕も来ちゃったよ。
 和>ちょっと、お互い干渉しあわない約束だったよね。
 豪>全員集合するな!
 
 和>ふーん。そういう事だったんだ。生が元気とわかって良かったね。
 愛>僕も安心したよ。こういう情報は全員に流して欲しいね。皆も心配しているんだから。
 豪>すまない。
 智>問題はそこじゃ無くて、豪が男として問題有りの方だろう。
 豪>その話を蒸し返すな!
 和>凄く豪らしいと思うけど。
 愛>じゃあ、智ならそういう時どうする?
 智>好みのタイプなら迷わず押し倒す。でなければ部屋から叩き出す。
 愛>ぶっ。ちょっと極論過ぎない? 僕も豪と同じ行動をすると思う。
 和>僕はケースバイケースかな。好きな子相手だったらできるだけ自然にそういう雰囲気に持っていくと思うよ。
 豪>そういう雰囲気?
 智>豪、わざとボケてるのか、マジで聞いているのかどっちだ?
 豪>何かおかしな事を言ったか?
 愛>……。
 和>(爆笑)
 智>豪=真性馬鹿。

「真性馬鹿とは何だ!」
 思わず上げた声に驚いた千寿子が振り返る。
 しまったと思い、焦った豪は急いで画面を終了させようとしたが、それより早く千寿子がノートパソコンを取り上げた。
 画面に映し出された文面を読んで千寿子は肩を震わせる。そして、恐ろしいスピードでキーを打ち込んだ。

 部屋>千寿子さんが入室しました。
 千寿子>全員、いい加減にしなさい!(激怒)

 その直後、豪と千寿子を残して全員がチャットルームから退室した。
 千寿子が目を据わらせてノートパソコンを閉じると、豪は大きな身体を小さくして俯いた。
「真面目に勉強しているものとばかり思っていたのに、チャットで遊んでいたのね」
「キーの早打ちの練習になったし、会社概要の解らない所を皆に教えて貰っていたんだ」
「あの内容で?」
「さっきまでは真面目に勉強していたんだが、途中で脱線してしまって……」
 どんどん空気を重く感じた豪は素直に頭を下げた。
「俺が全部悪かった」
「チャットを言い出したのは智ね。社内RANサーバーに勝手にプログラムを入れたのは和紀。愛はそれに便乗ってところかしら」
 ノートパソコンをテーブルの上に置いた千寿子がずばりと言い当てる。
「俺は知らない事ばかりだから、皆が色々と協力してくれたんだ」
「豪、顔に『嘘』って書いてあるわよ。皆を責めたりしないから安心して。皆、あなた達が居なくて寂しいのよ。その気持ちは解るから怒ったりしないわ。でも、次からは仕事時間外にしてね」
 千寿子の言葉に豪はほっとして胸を撫で下ろす。
「一言、わたしに言ってくれたら許可を出したのにね。色々裏技をやってくれたみたいだから痕跡が残らない様に細工をするのが大変だわ」
 千寿子はマスターIDで社内ネットワークを素早く調べると、和紀に指示をメールで送った。
「基礎研究部門に仮サーバーを作ったから今後はそっちで遊んでちょうだい。いくら和紀でもわざわざセキュリティ管理部門へのハッキングは止めて欲しいわね。冗談のつもりでしょうけど、絶対担当者は今頃泣いているわよ」
「?」
 何を言っているのか判らないという顔の豪に千寿子は笑って告げた。
「ネットワークの世界は1日やそこらで理解できるものじゃ無いって事。豪は何も知らなかったのだから『自分が無知』だと解っていれば良いの。そして今は『無知は恥じゃ無いけど、様様な落とし穴に落ちやすい』という事も知っていれば良いのよ。おいおい勉強して貰うから」
 千寿子はノートパソコンを開くと、今度は豪の隣に自分専用のノートパソコンと椅子を持ってきてマンツーマンでレクチャーを始めた。



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