Rowdy Ladyシリーズ 1 『Lady Salamander』

8.

 長官室に戻ってきた2人の顔を見てΩ・クレメントとマザーは心から安堵を覚えて微笑んだ。
「マザー、すぐに契約をするわ。書類を出して」
 駆け込んできたリンダの真剣な眼差しに、マザーは笑みを浮かべたまま2人に席を勧める。
『ありがとうございます。リンダ・コンウェル嬢。契約の前にあなたに承知していただきたい事が数件有ります』
「何?」
 半円形のソファーに座ったリンダは早くと先を促す。
『まずこれをお読みください。あなたが太陽系警察機構の刑事を名乗れるのはα・シリウスと行動を共にしている時だけです。その理由は解りますね?』
「正式な資格を全く持たないからでしょう。学生のわたしが堂々と1人で刑事を名乗れる訳無いわ」
 あっさりと答えるリンダにマザーは紙の契約書を出して話し続ける。
『これよりあなたは太陽系警察機構の一員として厳しい守秘義務が課せられます。たとえあなたの父君であろうと此処や現場で知り得た情報を一切話してはいけません』
「まぁ当然でしょうね。と言うか、どこの企業にでも有る社内規則みたいなものはパス。さっさと先に行きましょ」
『そうせかさないでいただけませんか。これらは全て後々に大事になってくる事柄なのです。契約を結んだ後で「読んでいない」は通用しないのですよ。こちらにも説明義務が有るのです。給与はあなたが学生という身分で有る事を考慮し、時間制に危険手当をプラスする形にしました。無理を圧して未成年者のあなたを勧誘したのです。あなたの学業が疎かになってはいけませんから』
 リンダはマザーのコンピュータならではの律儀さに、微笑ましさを感じつつも今はもどかしさが勝ち、あっさりと言い放った。
「説明は要らないわ。だって、もう全文を読んじゃったんだもの」
 リンダの返事にΩ・クレメントと、メディカルキットで火傷の治療をしていたα・シリウスも一様に驚いたという顔を見せる。
 マザーがテーブルの上に契約書を出してわずか30秒足らず、7ページにも及ぶ契約書全文を読み、完全に理解したと言うのか。
「速読は経営者の基本。難しい問題を抱えて熟慮するのに時間を費やすのは無駄じゃ良いわ。でも、報告書を迅速に処理出来なきゃ、身体がいくつ有っても足りないわ」
 飛び級の大学生とはいえわずか17歳、太陽系でも5指に入る企業経営に関わる勤労少女の能力の高さに、マザー達は舌を巻いた。
『承知いたしました。リンダ・コンウェル嬢。こちらにサインとDNA認証を。契約書は機密を守る為に当方に残る1部のみだけです。リンダ・コンウェル嬢にはこの契約書を写したBLMSと身分証明書を発行して後日お渡しします』
 マザーが指をさした場所に、リンダはウエストポーチから出した使い慣れたペンを素早く走らせ、新品のBLMSを一舐めして署名の横に貼り付ける。
 偽造やコピーが出来ない様に23世紀になった現在も、正式の契約書は手書きのサインと印章付の書面で行われている。
 マザーから渡された書類に承認サインを付け加えながら、Ω・クレメントはコンウェル財団でのリンダの地位に思いを走らせた。


『レディ・サラマンダー(火竜)、これからあなたをそう呼ばせていただきます』
「レディ級? リトル・レディ級の間違いじゃないのか?」
 リンダの横に座っていたα・シリウスがあまりの特別待遇に驚きの声を上げる。
「なるほど」
 Ω・クレメントは他支部や外部機関を納得させるリンダの地位に頷いた。
 正式に公表できるパートナーでは無いが、能力的にはリンダがレディ級になっても問題は無い。
 現にα・シリウスも研修明け直後に、担当教官と研修先のマザーからα級認定を受け、Ω・クレメントも了承してサインをした。
「名前が嫌!」
 リンダだけが少々ズレた抗議をした。

『リンダ・コンウェル嬢の独特な髪の色とイメージに最も似合うコード名を選んだのですが、何か問題が有ったでしょうか? 喜んでいただけるとばかり思っていましたわ』
 困惑の表情を浮かべるマザーにリンダは立ち上がって詰め寄った。
「何故竜(ドラゴン)なのよ? わたしの髪の色に合わせたのなら黄色い花の名前とか、もう少し可愛い名前を付けてくれてもいいじゃない」
 不満たらたらに言いつのるリンダの背後からボソリとα・シリウスのツッコミが入る。
「食虫植物か毒草か? 神話に出てくる伝説の竜というより、ダイナソー(恐竜)とか……モンスター(怪獣)の方がより性格を現していると思うが」
「どういう意味よ?」
 リンダの空拳がα・シリウスの頬ギリギリをかすめ、その勢いでヒビが入っていたゴーグルが割れて宙に舞う。
「……ったく、言ってる側から馬鹿力と凶暴性を証明するな」
 すでに使い物にならなくなっていたとはいえ、素顔を晒されたα・シリウスは溜息を付いてゴーグルを拾った。
 リンダは初めて直にα・シリウスの素顔を見て絶句する。
 年齢は多い目に見てもせいぜい27、8歳、たしかにα級刑事としては最年少クラスと言えるだろう。
 彫りの深い顔立ち、手入れもしていないのに整った眉、何より吸い込まれそうなほど印象的な蒼い瞳。
 マザーがα・シリウスに「シリウス(天狼星=青星)」の名前を与えた理由が簡単に理解できる。
「め……滅茶苦茶ハンサムなのに、何でこんなに口が悪いのよ」
「その言葉をそのままお前さんに返してやる」

 売り言葉に買い言葉、しかし、1度口に出してしまったものは決して取り消せない。
 Ω・クレメントとマザーは驚きと同時ににやりと笑みを浮かべた。
『まぁ、α・シリウス。今のは女性をくどくには到底誉められたものではありませんよ。もっと周囲の雰囲気や状況、当然言葉も選ばないとね』
「はっはっは。いや、α・シリウス「君」、君とはずいぶん長い付き合いだが、君の女性の趣味がこういうタイプだとは全く気付かなかった。どうりでうちの女性職員達が君に向ける熱い視線を無視して通る訳だ」
 うんうんと嬉しそうに頷く2人に「誰が誰をだ!?」とα・シリウスは怒号を上げた。
 リンダは頬を染めてΩ・クレメント達に食って掛かるα・シリウスを見て、時折見せる大人げない態度も年相応の反応かもしれないと思った。

「あのねー、馬鹿をからかって遊んでいるところを悪いんだけど、わたしのコード名を変えて欲しいという要請はどこに行ったの?」
 リンダが不機嫌な声を出すと、マザーがあっさりと答えを返した。
『残念ながらすでに登録して全支部に通達を送信してしまいました。わたくしにも変更はできません』
「本人の承諾も無く決めちゃったの?」
 日頃はこの手のトラブルは全てマザーに任せているΩ・クレメントが、よほど機嫌が良いのか珍しく助け船を出した。
「レディ・サラマンダー、1度決まってしまったコード名は、よほどの事態にならない限り変えられないのだよ。どうしてもコード名で呼ばれるのが嫌なら、ニックネームをつけたらどうだろう」
「……そうね」
 頭の切り替えが早いリンダは、訂正の効かない事に拘るのは止めて、新しい自分の名前を考え始めた。
「面倒臭いから、短く「サラ」で良いだろう」
 α・シリウスがあっさり言い切るとリンダも素早く切り返す。
「じゃあ、あなたは「シリ」ね」
「勝手に変な略し方をするな」
「あなたの略し方と同じでしょ。って、そう言えば、何故男性はα、β、γで女性はレディ、ウーマン、リトル・レディなの?」
 更に文句を言おうとしたα・シリウスに背を向けて、リンダはマザーに素朴な疑問を投げかけた。
『簡単な心理作用が理由です。男性は数字や記号に意義を見いだし、女性は敬称に意義を見いだします。級(クラス)を上げたければそれだけの成果を挙げなさいという、わたくし達からの激励も含まれています』
「納得」
 どちらも意地でもクラスを上げたくなる様に上手くプライドを刺激するタイプだ。
 ヒューマノイド戦略コンピュータの決める事に無駄は無いって事ね、とリンダはソファーに腰掛けた。


 レディ・サラことリンダがこれで一段落付いたとコーヒーを飲みながらΩ・クレメント達と談笑していると、マザーが突然両手を口元に当てておろおろと忙しなく視線を動かした。
『……こういう場合、どうしたら宜しいのでしょうか? この様なケースはわたくしにプログラムされていません。ケイン・コンウェル氏からリンダコンウェル嬢の事で、Ω・クレメントと直接話がしたいとの最優先緊急回線が入っています』
「ケイン・コンウェル氏が私に?」
「どうやってサラが此処に居ると判ったんだ?」
「あーーーーっ!!」
 リンダは周囲の緊張を更に煽る様な大声を上げた。
 慌ててソファーから立ち上がり、キョロキョロと素早く周囲を見渡して、結局長身のα・シリウスの陰にしゃがみ込んで隠れた。
「わたしは居ない。居ないと言って」
 ソファーの陰から必死に手を振るリンダを見て、Ω・クレメントは深呼吸をして「繋いでくれと」マザーに告げた。
 中央テーブルの上にモニターが表示され、ケイン・コンウェルの上体が映し出される。
「初めまして、ケイン・コンウェルさん。私がこちらの最高責任者Ω・クレメントです」
 ケイン・コンウェルは軽く頷いて鋭い声で切り出した。
『初めまして、Ω・クレメント。貴方のご活躍はかねがね窺っております。無駄話をする時間は有りませんので単刀直入に言います。そこに隠れているうちの「馬鹿娘」をモニターに出していただきたい』

うわーっ、ついに来ちゃった!
 と、リンダは頭を抱えた。
 もっと早く気付くべきだった。
 意識を失いフィールドがスクランブル・モードに切り替わった時点で、リンダが事前に施した偽装は自動的に全て解除される。
 髪飾りに仕込んである通信装置はあらゆる手段を使って、リンダの現在位置をコンウェル家に伝える様に働くのだ。
 この9年間、何が起ころうとも1度も使われなかった緊急スクランブル通信にコンウェル家がどれほど騒然となった事か、心配性の家人達のパニック状態が目に浮かぶ。
皆、ごめんなさい。
 と、思いながらリンダは更に小さく身体を窄めて頭を隠した。
 一方、まるで……いやそのものなのだが、完全に居所を押さえられているにも関わらず、怒っている父親から姿を隠したつもりでいるリンダをα・シリウスは「お前は3つの子供か?」とツッコミを入れたいと思いながら見つめ続ける。
 両親の記憶を少ししか持たないα・シリウスにとって、ケイン・コンウェルの娘を心配するあまりに横柄とも言える態度や、親に叱られるのが怖くて小さくなっているリンダの反応はとても懐かしく、同時に微笑ましくも有った。
 何より出会って以来全く可愛げが無く、自信満々のリンダが普通の少女らしい姿を見せるなど思ってもいなかったので、自然と口元に笑みが浮かびリンダの頭をぽんぽんと撫でた。
 頭に乗せられた手に気付いたリンダが顔を上げて、瞳だけで「助けて」と訴えるのを見て、もしも妹が無事に生まれていたら……という今まで感じた事が無かった感傷がα・シリウスの中に起こる。
「任せろ」と小声で言って更に数回頭を撫でた。
 顔を正面に戻すと百戦錬磨のΩ・クレメントとマザーが、2人掛かりでもケイン・コンウェル相手に相当手こずっている。
 リンダの強引さや口の悪さは父親譲りと言うわけかと、α・シリウスはモニターカメラをリンダを写さない様に自分に向けた。

 ケイン・コンウェルは突然切り替わった画面に一瞬だけ戸惑ったが、モニターに映し出された青年の姿を見てそういう事かと理解する。
 アンブレラI号に残されていたわずかな映像、がら空きのVIPラウンジでわざわざ娘に声を掛けて正面の席に座った青年と、今目の前に現れた青年の全体の印象が酷似している。
 均整の取れた長身、短い黒髪を綺麗に後ろにセットしている青年の真摯な目に好感を覚える。
 顔の痣や手の指先に僅かに残る火傷の跡が、この青年がスクランブル・モードの際に娘の側に居た事を雄弁に物語っている。
 初めは自分の信用を得る為かと思っていたが、太陽系警察機構刑事が民間人から素顔を隠す為に携帯している不可視ゴーグルの存在を検知できないところから、強いフィールドによって破壊されたという事も簡単に想像が付く。
 昨夜、娘の元に届けられた手紙もこの青年からのものだろうとケイン・コンウェルは察しを付けた。
「初めまして、USA支部α級刑事シリウスです。娘さんをこちらにお招きしたのは私です」
 全てを見透かす様な鋭い視線を向けられ、α・シリウスも内心は穏やかでは無い。
 Ω・クレメントとは別種の太陽系で勝ち続け、生き残ってきた者だけが持つ真の強さを正面に映る中年の男性から感じていた。
 明るい紅茶色で癖の有る髪を軽く流し、リンダとそっくりな意志の強さをよく現した明るいエメラルドグリーンの瞳は、自分を真っ向から見つめてくる。
「アンブレラI号で娘さんに多大なご迷惑をお掛けしたお詫びを今更ながらさせていただこうと思った次第です。ご家族の方にもご心配をお掛けして大変申し訳無く思っております」
 わずかに頭を下げるα・シリウスにケイン・コンウェルは片手を上げて「下手な芝居は良い」とあっさりと言い切る。
「リンダ! 彼の後ろに隠れている事はすでに解っている。自分の不始末を人任せにする情けない人間に育てた覚えは私には無いぞ」

 その声に文字どおり飛び上がったリンダは、α・シリウスの頭を押しのけて、カメラの前に姿を現した。
「誰が自分の尻ぬぐいを人にさせてるって? 冗談じゃ無いわよ。ちょっとだけ時間稼ぎをお願いしただけよ」
 モニター越しに娘の元気な姿を見て安堵したケイン・コンウェルは一瞬瞳に優しい光りを宿したが、追求する口調は変わらない。
「学校が終わってどれたけの時間が経っていると思う? 家に連絡の1つも入れずにこんな時間まで夜遊びとは良い度胸だな。お前の居所が掴めるまで、マイケル達がどれほど心配したか分かっているのか? しかもご丁寧にダミーを10個もばらまきおって、1つ1つを潰していくのにどれだけの労力が要ったと思う」
「あー、もう。うるさいわね。パパ、何が起こるか判らない状況では全ての可能性を考慮して事に当たれっていうのは定石でしょう。今日は仕事が入っていない日だから、放課後はわたしの自由時間のはずよ。あれほど挑戦的な手紙を受け取って、わたしが黙って引き下がれる訳無いでしょ。それくらいマイケル達だって解ってくれているわよ」
「今、何時だと思って寝言を言っているんだ。この馬鹿娘!」
「人前で娘を馬鹿馬鹿言うな。このクソ親父! わたしだって考えて動いているわ」
 放っておけばいつまでも続きそうな不毛な親子喧嘩に、マザーが申し訳無さそうに横から口を挟んだ。
『その……大変申し上げにくいのですが、リンダ・コンウェル嬢。お父様のご立腹は常識的に当然の事と思われます。現在の時刻は午前0時23分です』
「え?」
 リンダは慌てて髪飾りに手をかざしてデータを読み取り、更にコンタクトレンズに表示された現在時刻に目を白黒させ、ばつが悪そうにモニター画面の父に向かって作り笑顔を見せた。
「もしかして……夕食抜きの刑?」
 漸く自分のやった事を自覚できたのかと溜息を付き、ケイン・コンウェルは頷いた。
「当然だ。ストレスと超過勤務で疲労しているマイケル達はとっくに休ませた」
「うーっ」

 このビルに入ってからかなりの時間が経過している事はリンダにも判っていた。
 それだけ中身の濃い話し合いを続けてきたのだから当然とも言える。
 時間感覚が完全に狂ってしまったのは、意識を失っていた時間が自分が思っていたよりもずっと長かったという事だろう。
 α・シリウスが居る手前、意識不明の間に何が起こったのかを時系列で調べる事が出来なかったのは失敗だった。
 あのまま話に夢中にならず、「トイレ」とでも言って退席してチェックを行うべきだったのだ。
「お話の途中失礼します。娘さんに対して謝罪及び事情説明に思いの外時間を要してしまったのは私に責任が有ります。改めて保護者の方にもお詫びいたします」
 丁寧に頭を下げたのは、パートナーになったばかりのα・シリウスだった。
 リンダの了解とサインを貰っても未成年という立場はいかんともしがたく、保護者のケインが正式に異議を唱えれば契約書は無効になる。
 リンダの性格からたとえ父親が相手でも自分の信念は曲げずに正面突破を計ると判断し、ならばパートナーの自分が懐柔策に出た方が得策とα・シリウスは考えた。
「娘さんは私が責任を持って自宅までお送りします。彼女も充分に反省しているでしょうし、今日のところはこの辺りでご勘弁していただけませんか?」
 ケインはα・シリウスの提案に鷹揚に頷き、リンダに「さっさと帰ってこい。馬鹿娘」とだけ言い残して回線を切った。

「1人でリニアシャトルに乗って帰れるわよ。そっちの方が早いわ」
「馬鹿を言うな。これ以上ケイン・コンウェル氏の機嫌を損ねる訳にはいかないだろう」
「もしかしたら納入の件? 父は仕事とプライベートは完全に分けて考える人だから心配は要らないわ」
 仕事と勉強には優秀な頭脳と勘を惜しみなく発揮するくせに、自分の事には無頓着らしいリンダの頭をα・シリウスは軽く叩いた。
「サラを俺自ら無事に帰さないと、未成年者誘拐で太陽系警察機構が訴えられる。それくらい気付け」
 完全な子供扱いに不本意と顔に書いてリンダが不満を漏らす。
「17歳、大学生。自分から付いて行った場合も適用されるかしら」
「やり手の弁護士ならサラが自分で「誘拐じゃ無い」と言っても、いくらでも理由を付けて訴えられる。事前に演習と称してホテル側の了解を取っていたとはいえ、名乗らずにサラをホテルに呼び出して脅し、地下駐車場で襲ったのは事実だ。被害がこちら側にしか出なかったとはいえ、第3者から見た状況は変わらない」
 ソファーの背もたれに両手と顎を乗せたままむっと頬を膨らませるリンダの頭を、α・シリウスは落ち着けと数回撫でた。
「下に24時間の職員用食堂が有る。サラの家の味には数段は劣るだろうが、そろそろ胃も落ち着いて腹も空いているだろう。家に送る前に食べるか?」
「シリの奢り?」
 自ら貧乏勤労学生と言い切るだけ有って、リンダの質問は切実で単純明快だ。
「奢ってやるから腹一杯遠慮無く食え」
 目を据わらせてリンダの襟首を掴まえると、α・シリウスは長官室を引きずりながら一緒に出て行った。
 自分のペースを保ち続けるには、リンダ相手に遠慮していては絶対対抗できないと気付いたらしい。

 心から信頼出来るパートナーを得るという事が、これほど簡単に人を前向きに変えてしまうものだろうかと、α・シリウスの嬉しい変化にΩ・クレメントとマザーは同時に吹き出して大声で笑った。


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