erem29
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『ダークスタイル・ダークエレメンタラー 〜ヴァーダークラルアンティー 闇戦記(やみせんき)〜』
第二十九旋承壁陣(だいにじゅうきゅうせんしょうへきじん)
たかさき はやと
「ここがベルスタークか」
緑に囲まれた平原がえんえんと続く。
遠くに城と城下街が見える。
「なつかしいな」
ダリルが感慨にふける。
「これがダリル様のいる国ですか」
エルフィールの問いに「そうだ」とダリルは言った。
「なにも変わった感じは受けないわね」
ミラルが一人ごちる。
「だが、なにか異常があるからハーバイト様が地上で植物を育てなくてはいけないのです」
「死の国々とは砂と土の記憶。
どこかにハーバイトが釘付けになる理由がある」
ダリルはそう言うと歩き出す。
ダリルに続く四人。
平原には腰まである石の壁が城下街まで続いている。
と、石の壁に座る老人が一人。
「おひさしぶりです」
ダリルがあいさつする。
「おお、ダリルか。どうだった」
エルフィールがいぶかしげに老人を見る。
「はい、王よ、原因はこちらにあるようです」
ダリルの言葉にエルフィールは、この老人がこの国の王であることを知る。
「なんか知ってるのか」
エルフィールが王に聞く。
「さあ、それがわかれば私はお役ご免で隠居できるのだが、ね」
王は空を見ている。
青空はどこまでも続いていた。
「そういえば」
王の言葉にエルフィールは「なんだ?」と聞く。
「地震が多くなった」
「それがどうした」
エルフィールはつっけんどんに聞く。
「カテラグルになにか因果関係があると?」
ダリルがそう聞く。
「そうかもしれん。そうじゃないかもしれんなあ」
「行ってみましょう」
ダリルはそう言うと歩きだす。
「カテラグルとはなんですか?」
エルフィールの質問に「話すより見たほうがはやい」とダリルは言う。
一行は岩山まで歩く。
洞窟がある。
入っていく五人。
薄暗い岩の洞窟に、ダリルが魔法の灯火をつける。
それは人魂のようにゆらゆら一行を照らす。
どのくらい歩いただろうか、なにか振動がする。
それは轟音にまで、地震のごとく洞窟がゆれている。
「なにかいる?」
エルフィールは広場に出ると、巨大ななにかがすごいはやさで移動している。
それが細長い胴体の竜であることにエルフィールは気づく。
頭も尾も洞窟の先に消えていて見えない。
胴体だけが高速で移動しているのが見える。
竜の胴体は川のように移動している。
一向に竜の尾は見えない。
胴体だけが、えんえんと移動している。
「これがカテラグルか」
とハイベル。
「うわー本物だあ」
とミラル。
「地面が移動するのも山が噴火するのもこの竜が地を移動しているからなのだ」
ダリルが説明する。
「これ以上先には行かないでいただきたい」
誰かがそう言う。
「誰だ!」
エルフィールの言葉にニンジャが現れる。
「竜は傷ついています。いまは死を待つのみなのです」
ニンジャはそう言う。
「これが異常の原因か」
ジョルディーが納得する。
「もうすぐ来るな」
ジョルディーがエルフィールを見る。
うなずくエルフィール。
二人の手が光る。
光りの剣が生まれる。
移動している竜の胴体に傷ついた箇所がやってくる。
ザキン!
斬った場所が傷が消える。
竜は活気を取り戻した。
「こんなことが……」
ニンジャは驚いたようだ。
「ハーバイト様が神殿にお帰りになりました」
ハイベルがそう言う。
「とりあえずこれでいいのか」
「そうも言えません」
シャリン
ニンジャはそう言うと日本刀を抜く。
エルフィールは光りを球形にしょうとするが、うまく丸くならない。
とりあえずニンジャの剣を光りの剣で受け止める。
キンキン!
ニンジャの素早い剣さばきをなんとか光りの剣で受け止める二人。
シュシャッ
手裏剣がエルフィールのほほを裂く。
「こなくそっ」
ギンッ!
ニンジャの日本刀がはじけ飛ぶ。
ニンジャは飛び上がると手裏剣を無数に投げる。
光速。
光りの剣は手裏剣をすべてはじき飛ばしてニンジャを斬る。
ザキン!
――なぜ竜を殺すというのか。
ニンジャの集団はそう問いながらも竜を斬った。
――これしかないのだ。
ニンジャの首領はそう言う。
――地上が崩れる前に……。
「なにか訳(わけ)があるようだな」
ジョルディーがそう言う。
「ただ斬ればいい」
エルフィールは怒髪している。
「とりあえずニンジャがいるヘクタスに行く必要がある」
ダリルの言葉に五人は歩き出す。
まだ道は続いていた。