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『ダークスタイル・ダークエレメンタラー 〜ヴァーダークラルアンティー 闇来神(やみくるかみ)〜』


                 第二十五旋承壁陣(だいにじゅうごせんしょうへきじん)


                               たかさき はやと






。 岩場が続く岩の広場に男が立っている。
体格のいいジョルディーのさらに上をいく体格の男だ。
短髪の男は言う。
「誰だ」
エルフィールが問う。
その男より先にハイベルが口を開く。
「戦いの神バラフィックだ」
ギャリンッ
バラフィックは長い剣を抜く。
「怖いかエルフィール」
「いや、武者ぶるいだ」
「神は戦うことを恐れはしない。なによりも私は戦いの神。私と戦え! 神を倒してみせろ。人よ英雄たれ」
「なんかうるさいヤツだな」
エルフィールは頭をかく。
じりじりと近づいてくるバラフィック。
「戦わないわけにはいかないな」
「そうか」
エルフィールとジョルディーは話している。
バラフィックはもう目の前にいた。
剣を振り上げるバラフィック。
ザキン!
それより速くエルフィールとジョルディーの光りがバラフィックを包む。
バラフィックはなにごともなかったかのように立っていた。
「神は斬れない」
ぽつりとバラフィックは言う。
「そういやハイベルも斬れなかったな」
エルフィールはバラフィックに向き直る。
「その光りこそ神そのもの。神で神を否定するつもりか」
バラフィックの言葉に「そうなのか」と、エルフィール。
「そうらしいな」
あっけらかんとジョルディー。
「どうする」
「こまったな」
「全然そうじゃないみたいだな」
「そうだな」
「たぶん……」
ジョルディーとエルフィールの問答にダリルが口をはさむ。
「それが同質のものならば、やはりその光りで斬るしかないな」
ダリルがそう助言する。
「はいっ」
エルフィールは生き生きとしている。
「どうする。どうすれば斬れる」
ジョルディーに向き直るエルフィール。
「要は斬ればいいんだろう」
「なにか策があるのかジョルディー」
「ない」
「そうか……って、おまえはこの状況が飲み込めんらしいな」
「とりあえずは、来るぞ」
バラフィックが突進してくる。
ゴゴウッ
バラフィックがその長剣を振るう。
避けた二人の後ろの岩が砕ける。
「避けたはずだが、なぜ岩が砕ける。風圧か?」
エルフィールが神妙な顔で言う。
「バラフィックの剣は振るうとき、何倍にもその長さを変えるのです」
ハイベルが助言する。
「ハイベル! 神の一端である貴様がなぜ神に逆らう」
「この人たちといると神々が変わる気がするんですよ」
「ハイベル。所詮は貴様も人の子か。なにを錯覚したか知らんが貴様もその程度か」
ハイベルはなにも言わず歌をうたいだす。
美しいメロディが場を包む。
エルフィールはため息をつく。
「なにを呑気に歌っている」
だが、なにか力がわいてくるのをエルフィールとジョルディーは感じた。
それはエルフィールとジョルディーへの戦いの歌だった。
「ハイベルそういうつもりか。いいだろう。だが、この人間どもを始末したら、次は貴様の番と知れ!」
バラフィックはエルフィールたちに斬りつける。
エルフィールとジョルディーはばらばらになって逃げる。
光りを出すひまもなく、剣撃が繰り出される。
後ろにさがっては避けられない攻撃を前に出ながらエルフィールとジョルディーは避ける。
ガキイン!
バラフィックの剣を受け止めようとしたエルフィールの剣がはじかれる。
その間合いのとれなさもありながら、剣の力もすさまじいものがある。
「くそっ」
岩を砕くほどの力など、受け止められそうになかった。
「ますますやばいぞ」
エルフィールがジョルディーに叫ぶ。
「くるぞ」
バラフィックが間合いをつめる。
と、バラフィックが銀の球体に包まれる。
それがダリルの魔法攻撃であることに、エルフィールは気づく。
「それがどうした」
バラフィックは銀の球体から出てくる。
「神は死なない。そんなことも知らないのか」
「たぶん剣も効かないな」と、ジョルディー。
「ますます光りで斬るしかないな」
エルフィールもうなずく。
エルフィールとジョルディーが走りながら近づく。
バラフィックも迫り来る。
バラフィックの剣撃と光りが生まれるのは同時だったのかも知れない。
ガイン!
光りはバラフィックの豪剣を受け止めていた。
「どうやら剣の破壊力を軽減するらしい」
「これならいけるな」
エルフィールとジョルディーはバラフィックの剣撃を二度三度と受け止める。
どれも受け損ねれば斬られるすさまじい威力だ。
と、バラフィックが剣を振るう速さが遅くなったようにエルフィールは感じられた。
「なんだ、息でもきらしたか」
エルフィールは不思議に思ったが、戦っている最中だ。
考えている余裕はなかった。
だが、戦いが続くにつれ、バラフィックはまるで弱体化したかのように、その速さが、力が衰えていく。
と、バラフィックが岩に足を取られる。
光りがバラフィックに降りそそぐ。
ザキン!
神が斬られた。
「神は没落し始めている」
−−−なんだ?
エルフィールとジョルディーの前に白い布につつまれた男がいた。
「神の没落をくい止めるためにカミバは拡大し続けている」
「神に捧げられるのだ。なにが不満だというのだ」
バラフィックはそう言い放つ。
「バラフィック。戦ってはいけない。神が戦って負けることは許されない」
「戦って勝てばいいのだ」
「没落に蝕(むしば)まれた神は戦うごとに弱っていく。誰とも戦うな。きみのためなのだ」
「戦いの神に戦うなというのか」
「そうだ」
−−−何十年戦っていなかっただろう。
「古代の人々に戦いを教え、強くなった者が挑んでくれば戦った。何億の世、斬りさいた。私は、私は戦いの神なり。人間よエルフよ。よくぞ私と戦ってくれた」
バラフィックは剣にもたれながらそう言う。
「私に悔いはない。さあ私を斬れ。いまこそ神話の終焉の時なり」
「さあ行くかエルフィール」
「そうだな」
ジョルディーとエルフィール、ダリルとハイベルはその場を後にする。
「もう、斬る価値もないか」
バラフィックは肩を落とす。
バラフィックの前にエルフィールがいた。
「おまえは強いぞ」
それだけ言うと、ジョルディーたちの後を追う。
「どうしたエルフィール」
ジョルディーが聞く。
「なんでもない」
−−−アイツが私に似ていると思えるなんて言えるか。
四人は神殿に向かって歩きだした。









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