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『ダークスタイル・ダークエレメンタラー 〜ヴァーダークラルアンティー =闇戦動(やみせんどう)〜』


                 第十七旋承壁陣(だいじゅうななせんしょうへきじん)


                               たかさき はやと






 森を抜けると、帝国までは岩ばかりの砂漠が続く。
 岩の切れ目から眼下をのぞけば、遙か深くに川が見える。
 起伏にとんだ岩の道がえんえんと続いていく。
「あと三日くらいかな」
 エルフィールはジョルディーに話す。
 ジョルディーはうなずく。
 ボロのマントに身をつつんだエルフィール一行は、帝国の城を目指して進んでいた。
「逃げるならいまのうちかな」
 鳥人、アベルが遠くを見てそう言う。
 帝国の軍勢が前からやって来ていた。
 その数四十人くらいだろうか。
「後ろからも来るらしい」
 エルフィールは精霊から耳打ちされたようなしぐさで言う。
「どうする」
 鳥人は翼をはためかせて、翼を暖める。
「とりあえず行こう」
 ジョルディーはそう言うと、三人の先頭をきって目の前の軍勢に向かって歩きはじめる。
 十分としないうちに、三人のまわりを六十人からの武器を抱える武人がかこむ。
 前衛は槍を構え、その後ろに剣と盾を持った者たち。さらにその後ろに弓隊が控える。
 兵士たちの息づかいが荒くなっている。
 空気は一触即発だ。
「隊長さんはいるかな」
 ジョルディーが呼びかける。
 兵士たちが静まった。
 馬のひづめがする。
 兵士のあいだから、馬に乗った者たちが現れる。
 馬の装飾は色彩豊かに彩られ、それでいて年季がある。
 馬上の者には他の兵士には見られない紋様が鎧にしてある。
 先頭の者にはさらに鎧に金色の毛が装飾されている。
「金色はブライアント帝国の象徴……どうやらあなたらしいな隊長さんは。私はジョルディー。よろしく願いたい」
 ジョルディーは頭をさげる。
「そんなことをしている場合か!」
 エルフィールは剣を構えた手を相手に向ける。
 それにはかまわず、隊長らしき者がジョルディーの方を向く。
「私が代表だ」
 一言、野太い男の声が答える。
「ここを通してもらいたい」
「それはできない」
「私たちはただ話し合いに行くだけですから」
「話すことはない」
 先頭の男は一騎だけ馬を進める。槍をジョルディーに向けながら。
 ざわめきが起きた。
 その光りのために。
 エルフィールとジョルディーのあいだに光りの剣が現れる。
「あぶないっ!」
 隊長を守らんと、三騎がふたりの前に踊り出る。
 一瞬光りが舞った。
 三騎は動きを止める。
 光りの剣は馬ごと三人を斬る。
 なにごともなかったように呆然と自分の体と馬を見る三人。
「おまえたちは、ひかえていろ」
 隊長は一騎前に出る。
 馬上から槍が迫る。
 洗練された突きはすきがない。
 避けるだけになってしまうふたり。
「なにか手伝うか」
 鳥人は手を貸すでもなく、平然としている。
「なにか、手は、ないのかっ」
 エルフィールに答えるでもなく、逆に騎馬に向かうジョルディー。
ザギン!
 光りの剣は馬上の者には目もくれず、馬を斬る。
 おとなしく立ちすくむ武馬。
 隊長は馬を降り、槍を捨て、剣を抜刀する。
 間合いは充分とっていたはずだった。
 隊長はその技量で距離を短くした。
 大きな剣は軽々と振り下ろされる。
 ふたりはとっさに光りの剣で受けた。
ザギギン!
 光りの剣は相手の剣を受けとめる。
 それどころか跳ね返した。
 驚いたのは敵側だけではなかった。
 エルフィールは目が点になった。
「それが魔王を切り裂いた剣か」
 感嘆の声はうれしさをかみしめる。
「貴殿と戦えてうれしいぞ」
 剣をななめに構え、間合いをつめる。
 素早い剣さばき。しかし、剣の軌道は同じだ。
「このっ」
 光りの剣がはじく。はじかれた威力を利用して、剣が一周してジョルディーを切り裂く。
「ジョルディーッ」
 ひざをつくジョルディー。
 服の内の鎖かたびらが裂け、血が服をぬらす。
「これまでか」
 隊長は剣を下げる。
「助太刀が必要か」
 鳥人はなにごともなかったように聞く。
 ジョルディーは無言で立ち上がる。
「おい……」
 エルフィールの声も聞かず、ジョルディーは光りの剣を構える。
「おしいな」
 隊長は剣を構える。
 隊長がふたりに迫る。
 剣が振り下ろされる。
 光りの剣がそれを受け止めなかった。
 隊長の剣は光りの剣を素通りした。
 隊長の剣が地を砕く。
ザギン
 ふたりの剣は隊長を切り裂く。
 勝負はついた。
 他の兵士たちがジョルディーたちに迫る。
 隊長が静止の手を横に引く。
 ジョルディーたち三人は兵士たちのあいだを歩いていく。
 どれだけあるいただろうか、兵士たちの姿が岩の端に消える。
 ジョルディーが倒れ込んだ。
「ジョルディーッ!」
 顔が熱を帯びる。血は際限なく流れていた。
「なんとかしろ」
 エルフィールは鳥人に言う。
「手遅れだ」
 鳥人はなんの抑揚もなく言い捨てる。
「なぜだ……」
 ふと、つないだ手を見る。光りはまだ消えてはいなかった。
 エルフィールは光りの剣を傷口を斬る。
 血が消え、ジョルディーの顔に生気が蘇る。
「まだ旅を続けられるな」
 エルフィールはジョルディーの元気な声に、ジョルディーを抱きしめた。
 まだ三人は歩を進めていた。









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