erem16
織刻(しょくこく)トップページ 言葉工房トップページ ファンタジーのページ
『ダークスタイル・ダークエレメンタラー 〜ヴァーダークラルアンティー =闇談話(やみだんわ)〜』
第十六旋承壁陣(だいじゅうろくせんしょうへきじん)
たかさき はやと
森も奥く深くなっていく。
空が見えない闇が周辺を占めた。
「どこまでいくんだろう」
鳥人の足が止まる。
「もう着いている」
鳥人がエルフィールの独り言に答えた。
羽音(はねおと)が聞こえる。
だんだんと、羽音が増えていく。
羽音の大合唱が空から降ってくる。
闇が降りて来た。
光りが戻り、森を映し出す。
無数の鳥人が降りて来ていた。
無数の鳥人に取り囲まれるジョルディーとエルフィールの二人。
「私の名はアベル」
振り返った鳥人はそう名のった。
アベルは鳥人の中でも鍛錬された肉体を持っていた。
アベルが槍(やり)を二人に向ける。
二人は自然と構える。
アベルのすさまじい殺気が場を支配する。
それは二人に向けられたものだった。
アベルが二人に斬りかかる。
避ける二人。
アベルは手加減していない。
本気でかかってくる。
まわりは鳥人にふさがれて逃げられる状態ではない。
一瞬のスキが致命傷になる。
エルフィールはサラマンダーを放とうとするが、その前にアベルの槍がすぐ迫る。
ジョルディーも槍をさばききるので精一杯だ。
ふいに二人の手が光った。
しかし、あいだにはアベルが槍を構えている。
二人はなんのちゅうちょもなく、アベルに向かって歩きだした。
ーーーこれが伝説の日の……。
アベルは二人を交互に見るが、なにかとまどっているようだった。
二人から光りが発し、アベルが光りに包まれる。
ザキン!
アベルがクリスタルの剣につらぬかれた。
アベルの殺気が消える。
二人は手をつないでいない、かなり距離が離れているが、二人の間にクリスタルの剣が生まれていた。
剣はじょじょに透明になっていく。
「ためすためとはいえ、失礼した……」
アベルは二人にひざをつく。
まわりの無数の鳥人もひざをついた。
森の光りが二人だけを包んだ。
他の鳥人は散って行った。
ここには三人しかいない。
「我々は空がその生活の大半をなす」
アベルがそう言う。
「我々鳥人たちをブライアント帝国が目指している」
「なぜ?」
エルフィールが問う。
「我々鳥人は武族(ぶぞく)として知られている。
ブライアント帝国は、争いに力を貸せとのことだ」
「力を貸すのか?」
「いや、それはまだ答えが出ない。
ブライアント帝国は強大だ。
我々も無敵ではない。
どうすべきか考えているのが現状だ」
「逃げるのはどうかな」
ジョルディーが本気とも冗談ともつかない口調で言う。
「逃げられる保証はどこにも無い」
「戦って勝てばいい」
エルフィールがそう言う。
「勝っても多くの犠牲が出るだろう。
武族とはいえ、戦うのは本業ではない。
我々は自由に空が飛べればそれでいい」
「それもそうだな」
ジョルディーがうなずく。
「ジョルディー、真面目に答えろ。
そんな他人ごとのように言うな」
「そう、他人ごとではない。
こうしょう。
二人でブライアント帝国に話し合いに行こう」
「だから冗談を言っている場合では……、本気、なのか?」
「まあな」
そう言ってジョルディーは笑った。
アベルは一言。
「助かる」
と、言った。
まだ、空は明るいが、嵐の予感がエルフィールをとらえた。