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『ダークスタイル・ダークエレメンタラー 〜ヴァーダークラルアンティー =闇霧情(やみむじょう)〜』


                 第十四旋承壁陣(だいじゅうよんせんしょうへきじん)


                               たかさき はやと






 「エルフィールじゃないか」
 エルフの遺跡まで行く途中、黒い鎧に黒いマントを着けた中年の男がエルフィールを呼び止める。
「誰だ?」
「誰だはないだろう。ディークだよ」
 エルフィールはディークを知っているが、こんな男ではなかった。
「姿が違うって?
 封印の魔則(まそく)のせいで存在が不安定になってさ、姿も変わってしまったんだ」
「そうか、それじゃ」
 エルフィールはさらに歩き出そうとする。
「エルフィール、封印の魔則(まそく)にならないか?」
 ディークの言葉にエルフィールの足が止まる。
「ダリル様無き今、私は放浪を続け、ダリル様の意志を継ごうとした」
「私もだ」
「なら話しは早い。これが私の結論だ。
 この世界には封印の魔則(まそく)が必要だ」
 エルフィールはジョルディーのほうを見る。
「エルフィールの考えに力を貸す」
 ジョルディーはそれだけを言う。
「それで……争いは……」
「そうだ、無くなる。君が元凶となるんだ」
 エルフィールは封印の魔則(まそく)を破るためにジョルディーに力を貸した。
 今度は逆の立場に立たされていた。
 そして、答えは決まっていた。
「断る」
「エルフィール、君には他になにか策があるのかい」
「今はない……。
 でも、必ず見つけてみせる」
「それでは困るな……」
「前をどけ、ディーク」
「ダメなのかい。なら、強引にするまでだ」
 ジョルディーがディークに剣撃する。
 ディークは黒い霧となり、剣はすり抜けた。
「ぼくの技術で君は魔則(まそく)となる」
 声が森の中に響く。
 人の姿に戻ったディークはまた別の男の姿になっていた。
「さあ、ぼくに気持ちを預けて……。
 ぼくが君の影になるよ」
 ジョルディーがさらに剣でディークを斬るが、結果は同じだった。
「ディーク、同じ過ちに気がつかないのか!?」
「だが、エルフィールはブライアント帝国が、
 侵略を始めようとしていることを知っているんじゃないか?
 なにかそれを防ぐ手があるかい?」
 エルフィールは、それには答えず、サラマンダーをディークに放つ。
 しかし、やはり黒い霧となり、消えるディーク。
 あたりは黒い霧に閉ざされた。
 ジョルディーのいる場所さえつかみにくいくらい、視界が悪い。
「さあ、そろそろ終わりにしょうか……」
「策なら、あるぞディーク」
「なにかな?」
「私たちが答えだ!」
 黒い闇の中に二つの光りが灯った。
 二人は光りを合わせる。
 クリスタルの剣が現れた。
「それが例の……聞きしにまさる美しさだ」
 ディークの声が闇に響く。
「でも、霧を斬ることはできない……。
 そうだろう、エルフィール」
 二人はクリスタルの剣を持ち上げる。
 クリスタルの剣は光りの霧となった。
「そんな……バカな……」
 闇は一片もなく、光りに包まれる。
 光りの霧は次第に消えていく。
「ディーク……」
 エルフィールはかすかに残った黒い霧に向かって言った。
 どこか寂しげな表情だった。
 ーーこれでいいんだエルフィール。
 ーー私はダリル様の影になった時から死んでいる。
 ーーエルフィール……、君の信じる道を行ってみろ。
 ーーダリル様もそれを望んでいるはず……だ……ろ……。
 黒い霧は風に消えていく。
 エルフィールの肩をジョルディーが支えていた。
「ディークは誰よりもやさしくて……私にやさしくて……」
「行こうか」
 ジョルディーの言葉にうなずくエルフィール。
 二人はまた森の中へと歩いて行く。
 すでに風は二人から離れて行った後だった……。









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